ペーパームーン 3 (ページ39)

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『あの時Aヌナはチソンイのサンタクロースだったじゃん』

「じゃあ今年は、ロンジュニのサンタクロースになろうかな」

『…僕の？』

前の椅子にかかっていたペディンのポケットから、どうぞと目の前に出されたのは、サンタクロースの形をしたキャンディだった。メリークリスマスと言いながら自分の手に渡ったそれを見つめていたら、スタッフさんから名前を呼ばれてAヌナが立ち上がる。

「よし、ちょっと行ってくるね」

『…Aヌナ、えっと、』

「ん？」

『その、すごく綺麗』

「…うん、ありがとう」

頭に触れた手の感触が、いつまでも残っている。椅子から動けないでいれば、さっきまでAヌナがいたところにジャニヒョンが座った。そういえばここはヒョンたちの待機室で、Aヌナがいなくなってしまった今、少しだけこの空間にいる自分がぎこちなくなる。

「ロンジュニは寂しくなっちゃったんだね」

『…え？』

「Aはここに帰ってくるよ、ちゃんと」

ほら、始まるよとヒョンが待機室の小さなテレビを指差して、1人でAヌナが歩いてくる。鳴り止まない歓声は、ちゃんとAヌナに聴こえているのかな。一度ゆっくりと目を閉じて、そのあとカメラに目線を向けた表情があまりにも綺麗で、なんだかじわりと目が熱くなる。

『ジャニヒョン、』

「ん？」

『僕が泣いたの、Aヌナに言わないでくださいね』

「じゃあ、ちゃんと見ておかないとね」

ドヨンイが泣いたら帰って来れなそうだからとヒョンは行ってしまって、入れ替わるようにマクヒョンが隣に座る。肩をさすってくれたのは、ヒョンもおんなじ気持ちだったのかな。

『マクヒョンはどう思ったの』

「どうって？」

『今日のAヌナ、ヒョンが最初に見たでしょ』

「俺はほら、上手く言えなくて」

『…そうなんだ』

「だからロンジュニが綺麗って言ってくれて、Aは嬉しかったと思う」

いつの間にか音楽は止まっていて、安心したように笑う顔が、少しだけ上がった口角が、ひとつひとつが、Aヌナが完璧に作り上げた、まるで大切に作られた宝石のように、キラキラと輝いている。こんなことを思わせる世界も、Aヌナが纏った世界も、全部綺麗だ。綺麗で、どうしたって、僕はまだ真っ直ぐには見られない。