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「Aさっきまで元気無かったんだけど、ジェノに会えて機嫌良くなったみたい」
『ヌナ何かあったの？』
「うん、歌謡祭のことで」
『コラボステージやるの？』
「いや、コラボの話も来てたけど、それ断って1人でやらせるって言われたらしい」
お待たせ〜と、ヌナが両手に袋を抱えて走ってくるから、立ち上がって袋を持つ。ありがとうと言うヌナに、大丈夫の意味を込めて首を振った。
「A、言っちゃった」
「えっ」
『ヌナ…一旦忘れた方がいい？』
「ううん、でもちょっと、うん、あんまり言わないでもらえると助かる」
『あんまりやりたくないの？』
「わたしが目立つのは、ほら、色々あるから」
いつの間にか取り分けられていたお皿を渡されて、そんな顔させるつもりじゃなかったんだけどと、ヌナの手が頬を撫でた。僕は今、どんな顔してるんだろう。
「でもさっきまでその話してたんでしょ？」
「昨日言われたんですよ、それで今日来たら資料渡されて」
「ドヨンイヒョンには早く言わなきゃ、あとテヨンイヒョン？」
「そもそもまだやるって言ってないので」
「でもほら、決定してから言った方がもっと怒られるよ」
チャーハンを食べているヌナの表情がどんどん険しくなって、一気にソファーに寄り掛かる。ストローを挿してそのままのコップを渡せば、ありがとうと顔がこっちに向く。
「ジェノ、」
『ん？』
「……ヌナに出来るかな」
ヌナの目には僕だけが映っていて、僕の目にも、ヌナだけが映っている。食べていたご飯を置いて、ヌナの手を握った。手を握るだけで気持ちが全部伝わったら、きっともっと楽に生きられるのにな。
『……僕は、ヌナのこと1番好きだよ』
「うん、ありがとう」
『僕が1番好きなヌナがこんなにかっこいいんだよって、みんなに言ってあげたい』
「…優しいね」
『だからヌナ、出来るよ』
こんな咄嗟に出てきた言葉で、ヌナの判断を僕が決めて良かったんだろうか。出来るよなんて言っておいて、本当にヌナがやりたくないと思っていたら、どうしたら良いんだろう。ジェヒョニヒョンを見たら頷くだけで、もう一度ヌナの方を向けば、握っていた手を引っ張られる。抱きしめられたことに気付くのは、もう少し後だった。
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作者名：yom | 作成日時：2021年10月3日 16時
