ペーパームーン 3 (ページ15)

今日:24 hit、昨日:49 hit、合計:128,168 hit

② ページ15

○

Aはごちそうさまでしたと手を合わせて、マークたちを連れてアイスを選びに行ってしまう。残った俺たちが、部屋を出るまで目を離さなかったことに気付くのは、ジェヒョンがAのいたところに座って、「見過ぎだよ」と笑ってからだった。

「Aって、テンヒョンかドヨンイヒョンの後ろにずっといたよね」

「俺ペアで練習する時最初怖がられてたもん」

「テヨンイヒョンはAの中で最初から怖かったらしいけど」

『えっ？』

得意げに笑うドヨンを見ながら固まってしまった俺に、ジェヒョンが「ヒョン、俺も最初怖がられてたよ」なんて言いながら慰められたけれど、急に最初にAを迎えに行った時の、Aの顔を思い出した。

『あ、だから、最初の時逃げられそうになったんだ…』

「そもそもAさんですか？なんて聞くからでしょ」

『何で知ってるの！』

「Aから言われたんだってば」

俺たちが話している間アイスを取りに行ったAたちが帰ってきて、ソファーに並んで座っている。ジャニがカメラを構えてぎゅっとくっつくから、子供みたいに可愛かった。テイリヒョンから何かを教えてもらったAが、アイスを片手にこっちまで歩いてくる。チーズケーキも有名なんですか？とユタに聞くAは、相変わらず目をキラキラとさせている。

「食べたい？頼んでみようか？」

「あ、いや、大変だったら大丈夫です」

先月のAと比べたら、見違えるくらいに元気になった。隠しきれていなかった隈も、細くなっていく体も、上がらなかった口角も、今のAには残っていない。ここで一緒にやりたいと言ってくれた、あの時よりも、更に前を向いている。

ユタの家族と楽しそうに話しながら、渡されたチーズケーキにまた目を輝かせるから、俺たちはまたAのことが、可愛くてたまらなくなる。

「オッパ、一緒に食べようね」

『俺も食べて良いの？』

「美味しいものは皆で食べるんですよ」

早く行きましょうと俺の手を握るAの手を、解けないように強く握る。顔を上げて俺と目を合わせて、にっこりと笑うAに、俺たちだって助けてられているのだと伝えてみよう。まずはケーキを食べて、Aがゆっくりと眠ってから。