チョコレートエンジェル ページ44
○TAEIL
「誰かいますか〜」と、玄関から声がする。返事をしてみれば足音が聞こえて、Aがリビングに入って来る。オッパおはようとソファーに座って、ぺディンの袖から見える手を擦り合わせるから、ちょうど持っていたカイロをあげた。
『なんか荷物多くない？』
「あ、どうぞ」
『…もしかして』
「そのもしかしてです」
抱えた大きな紙袋から、ピンクのリボンで結ばれた小さな袋を出して、Aが俺の手に乗せた。Aの好きなチョコレートと、顔が描かれたクッキーが入っていて、その顔とAの顔を見比べる。うん、そっくり。
「昨日休みだったから作ったんです」
『みんなに？』
「なんか楽しくなっちゃって」
お菓子が好きなAが、夜ご飯をチョコレートで済ませてドヨンに怒られている場面は、このグループが出来てから数え切れないほど見てきたけれど、最近はこっちで食べたり、自分でも作っているらしい。大人になったなと思う。練習着のポケットには、まだチョコレートが入っているけれど。
「みんないないんですか？」
『まだ寝てると思うよ。ドヨンイはさっきシャワーしに行ったけど』
「だから返事無かったんだ」
『そこに携帯置いてあるからね』
少しだけ拗ねたAが、オッパの食べちゃおうかなと袋を取り出した時、ガチャリとリビングのドアが開く。すごいタイミングで登場したドヨンを見て、Aの顔がもっと拗ねた。
「…A？何？」
「なんでもないです」
「何持ってるの？お菓子？」
「どうぞ」
まだ何も分かっていないドヨンにそれを渡したAは俺の隣に座って、これから皆の所に行くんですと楽しそうに笑う。バレンタイン？と気付いたドヨンは急に感動しながら近付いてきて、クッキーを見てAに似てる…と言った。わかるよ。
「オッパ一緒に配るの手伝ってください」
「いいよ。どこから行く？」
「まずはあの子たちで、次は会社で」
オッパも行く？と言われたけれど、今日は練習までソファーで横になっていたい気分の日だ。夜は一緒に食べようと言えば、特別だよともう一つチョコレートをくれた。みんないるかな？と言うAを見ながら、Aが呼べば全員何をしていても来るだろうと思う。Aは俺たちの可愛い妹で、弟たちの可愛い姉なのだから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1010人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
yom(プロフ) - 花藤さん» とても綺麗な言葉で表現していただきありがとうございます…！頑張ります！ (2021年8月15日 11時) (
レス) id: 0ce65e6476 (このIDを非表示/違反報告)
花藤(プロフ) - 淡々とした描写の中にきらりと光るそれぞれの感情と、おだやかな余韻がとっても素敵だと思います。一気に拝見しました。更新とっても大変かと思いますが、応援しています。 (2021年8月15日 2時) (レス) id: d70a6e9ed7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：yom | 作成日時：2021年8月10日 18時
