イエローが溶けていく ページ26
○RENJUN
「ヒョン、今僕たちって暇ですよね？」
『見ての通り暇だけど』
「じゃあ行きましょう」
『どこに？』
「ヌナのところですよ」
その言葉を聞いて、多分僕は言葉通り固まってしまった。段々とデビューの言葉が近付いて、最近は毎日練習と書かれたカレンダーを見ていたけれど、今日は午後からと書いてあることは、僕も目の前にいる弟も見落としていたらしい。中途半端な時間では練習室も空いていなくて、どうする？と迷っていたところにチソンの携帯に電話がかかってきて、僕が固まったところまで話は進む。
『…ヌナって？』
「Aヌナですよ」
『ほ、ほんとに？』
「ヒョン、ヌナのこと苦手？」
なんて言ったらいいのかわからないまま立っていたら、僕たちを見つけたマネヒョンはにこにこしながら僕たちを迎えに来た。Aから連絡が来るなんていつぶりだろうと嬉しそうに笑うヒョンを見ながら、心臓の音がちょっとだけ速く聞こえる。
『苦手っていうか、その逆で』
「逆？」
チソンは、最初から一緒だから…なんだか、こう…どう言ったらいいのかわからないけど、つまるところ僕はまだ、あの人に慣れていない。
・
「ロンジュナ？」
『あ、こんにちは』
練習室にまだ僕だけが来ていた時、ヌナ…Aヌナが開けっ放しのドアをノックして、床に座ったままの僕のところまで歩いてくる。こういうときヘチャンがいたら一目散に飛びついていくんだろうけれど、いつも大変そうだななんて他人事のように思っていたのが裏目に出たのか、これほどまでにあいつを欲したのははじめてだ。
「これ良かったら、みんなの分あるよ」
『良いんですか？』
「ヘチャニが昨日飲みたがってたから」
大きな紙袋にはたくさんのジュースが入っていて、ありがとうございますと頭を下げた。ロンジュンが好きなのがあると良いんだけどと言いながら、これはわたしのおすすめと、黄色のストローが刺されたオレンジジュースを手渡してくれる。
「スケジュール大変かもしれないけど、頑張ってね」
『あ、ありがとうございます』
「じゃあわたしも練習あるから、またね」
そう言いながら伸びてきた手が、僕の頬をそっと包む。にこりと笑ったAヌナの目に僕だけが映って、僕はジュースを落としてしまわないかだけを必死に考えた。だってそうしないと、体の力が抜けてしまいそうだったから。
・
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yom(プロフ) - 花藤さん» とても綺麗な言葉で表現していただきありがとうございます…！頑張ります！ (2021年8月15日 11時) (
レス) id: 0ce65e6476 (このIDを非表示/違反報告)
花藤(プロフ) - 淡々とした描写の中にきらりと光るそれぞれの感情と、おだやかな余韻がとっても素敵だと思います。一気に拝見しました。更新とっても大変かと思いますが、応援しています。 (2021年8月15日 2時) (レス) id: d70a6e9ed7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：yom | 作成日時：2021年8月10日 18時
