�� ページ25
○
最初の活動が今日で終わる。あれからAは、最初の日がまるで嘘だったかのようにいつものように戻って、楽屋に戻りながら明日は何を食べるかマークと楽しそうに話していた。
活動中、毎日Aを迎えに行っているドヨンに聞いてみても、「最初の日が偽物のAだったのかもしれない」とよくわからないことを言うだけで、マネヒョンが買ってきてくれたアイスを選んでいるAは、パタパタと足音を立てながら僕の隣に座った。
「オッパ、半分食べて」
『これAが好きなやつじゃないの？』
「2つ食べたら体冷えちゃうよ」
『そう？じゃあ貰う』
Aごめんね少し直すねとヌナが来て、Aがゆっくりと目を閉じる。女の子のアイドルだったらもっと煌めいていたかもしれないけれど、あくまでもナチュラルに、それでも煌びやかに、「アイドルのA」として、Aは完成されていく。
ヌナの邪魔にならないように腕を広げながらアイスを持っていたから、その手を持ったジェヒョンが、一口ちょうだいとAのアイスを齧ったけれど、僕は声を出さないようにするのが精一杯だった。
「ありがとうございま……え、」
「俺もこれにすればよかった」
「わたしのアイス…」
「え、そんな顔しないでよ…」
「オッパ、一口の大きさって知ってますか？」
半分以上持っていかれたアイスを見て、Aがわざと泣きそうな顔をする。僕にあげたアイスを見ても、Aがメイクを直してもらっている間にほとんど食べてしまっていた。マネヒョンはころりと騙されてしまうから、Aのアイス買ってこようか？なんて言い出して、僕は思わず笑ってしまう。僕が大切に育てたAは、僕が認めるほどのしたたかな妹になっていたようだ。
「マーク、明日はアイスも食べようね」
「うん！」
『僕も食べる〜』
「オッパ、あれ食べよう。大きいやつ」
『A食べ切れるの？』
「…仕方ないのでジェヒョニオッパにもあげますね」
もう食べられないように一気にアイスを口に入れたAが、「頭が痛い」と額を抑えてソファーに寝転がる。明日はアイスパーティーするのと楽しそうなAを見て、僕たちが少しだけ安心していることに、まだAは気付かなくても良いのかもしれない。無理に強くならなくて良いから、そのままのAでいて欲しい。我儘かな。でも、そう思うのはきっと、僕たちだけじゃないはずだから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1010人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
yom(プロフ) - 花藤さん» とても綺麗な言葉で表現していただきありがとうございます…！頑張ります！ (2021年8月15日 11時) (
レス) id: 0ce65e6476 (このIDを非表示/違反報告)
花藤(プロフ) - 淡々とした描写の中にきらりと光るそれぞれの感情と、おだやかな余韻がとっても素敵だと思います。一気に拝見しました。更新とっても大変かと思いますが、応援しています。 (2021年8月15日 2時) (レス) id: d70a6e9ed7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：yom | 作成日時：2021年8月10日 18時
