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逃げようかと思いながら振り返ったのに、オッパによって中に足を踏み入れて、前に座るおじさん達に挨拶をする。
オッパとテヨンさんは前の列に行ってしまったから、バレないように1番後ろの列まで下がれば、「ヌナ」と言う声が左から聞こえる。
『ジェノ、元気だった？』
「ヌナのこと待ってたんだ」
『大丈夫？お腹空いてない？』
「うん、これが終わったら一緒に食べたい」
『ヌナが奢ってあげるね』
「A、そろそろ良い？」
おじさんはそのまま話を続けて、流れる言葉は右から左に抜けていく。いや、抜けてはいけないんだろうけど、出来ることならここから逃げたいなという思いしか浮かばないのだ。だって、あまりにも非現実で、無謀で、理解なんてひとつも出来なかったから。
「A？」
『…えっと、』
「僕たちはもう出るから、また今度」
『…今じゃなくて大丈夫なんですか』
「A、俺たちはAのことを信じてるよ」
それはまるでわたしのことを信頼してくれているようで、わたしに拒否権なんてあるわけがないと言われているようだった。
ガチャリとドアの閉まる音がして、誰かが息を吐いた声が聞こえる。オッパがわたしの手を握ってくれるまで、瞬きのひとつも出来なかった。
「A、生きてる？」
『…やっとわかった』
「何が？」
『たまに、一緒に練習してたでしょう？』
「うん？」
『前は女子みんなでやってたのに、いつの間にか呼ばれる子は少なくなって、』
「最近はAだけが呼ばれてた？」
『オッパ、わたし、』
「A」
テヨンさんの声が、数十分離れていただけで怖く聞こえた。呼吸はちゃんと出来ているだろうか。隣のジェノがお腹が空いて倒れたらどうしよう。明日からどうやって生きていくんだろう。回らない頭で許容量を超えた考えばかりが浮かんで、オッパの手を握り返せない。
「A、僕たちはAが入ってくれることについて、みんな賛成だよ」
『テヨンさん、でも、』
「テンだってジェノだって、Aのことを愛しているし、勿論僕だって、今日初めて話せたけど、Aのことは大切に思ってる」
『…えっと、わたし何も分からなくて』
「まずは僕たち、お互いを知らないといけないね」
いいかな？と言うテヨンさんに何とか頷いたら、オッパがわたしを抱きしめてくるくると回った。
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yom(プロフ) - 花藤さん» とても綺麗な言葉で表現していただきありがとうございます…！頑張ります！ (2021年8月15日 11時) (
レス) id: 0ce65e6476 (このIDを非表示/違反報告)
花藤(プロフ) - 淡々とした描写の中にきらりと光るそれぞれの感情と、おだやかな余韻がとっても素敵だと思います。一気に拝見しました。更新とっても大変かと思いますが、応援しています。 (2021年8月15日 2時) (レス) id: d70a6e9ed7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：yom | 作成日時：2021年8月10日 18時
