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医務室の薄い襖を挟んだ向こうの廊下。
そこで一人悶絶している忍たまは、後輩に気づかれていることすら気が付かないほど余裕がない中、そわそわと身を揺らしていた。
「……いや、そんなはず……！」
その忍たまは久々知兵助。
久々知は頬を赤らめ……というか耳まで顔を真っ赤にしながら頭を抱えている。
何故こうなったのか？それは少しばかり時を遡った時のこと……
・
「兵助！」
火薬庫の整理をしていると名前を呼ばれ、くるりと振り返る久々知。
「何？」と言いながら話しかけてきた相手に視線を向ければ、そこには同じ委員長代理である竹谷八左ヱ門が立っていた。
「どうしたの？」
久々知が疑問を持ちながら竹谷に駆け寄れば、竹谷はぐっと口元を紡ぐ。
そんな様子の竹谷に更に疑問を持った久々知が首を傾げていると、竹谷は何か固い決心をしたように目つきを吊り上げると、頬を両手で引っ叩いた。
ばちん！という音が火薬庫に響き渡り、竹谷はその頬の痛さに目尻に涙を溜めている。
突然始めた奇行に久々知が慌て出すも、竹谷はそんなこと知ったこっちゃない。
すうっと腹一杯に空気を吸い込むと、久々知に向かって口を開いた。
「俺、お前に絶対負けないからな！！」
血管が浮き出るほど強い力で握っている拳を突き出しながらの竹谷のお気持ち表明。
だが、とうの久々知には全く理解ができずに首を傾げていた。
勝つ？負ける？一体何を。
「八左ヱ門、一体何を言ってるんだ？一旦落ち着いた方が……」
「とぼけても無駄だ！俺は……お前と同じ気持ちの俺ならわかる！」
「兵助がAのことが好きなことぐらい！！！！！」
……
「は！？！！？」
ぼん！と顔を真っ赤にして久々知は声を上げる。
火薬庫に久々知の声が反響している中、慌てて久々知は手を揺さぶると、否定の声を上げた。
「い、いやいやいや！ない！ありえない！俺があんな奴のことすっすす……！」
「いーやあるね！俺にはわかる！だってあの時兵助は恋に落ちた顔してた！」
「だっ誰があんなやつ！こっちから願い下げだ！」
「Aの悪口を言うな！！！！！！！！！！」 「剣幕が凄まじいな！？」
あの時……それは狼煙を上げた後みんなが集まった時のこと。
安堵のため息が聞こえる最中、二人だけが違う雰囲気を漂わせていた。
その二人とは久々知と竹谷のことであったのだ。
一度その道を踏んだ者だ、竹谷には自然とわかったのだろう。
久々知がAを好いていると言うことに
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作者名：タジロ | 作成日時：2023年10月3日 9時
