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自分でもアホらしいぐらい真剣に探していた。
いつまで経っても戻ってこないAを探すと言って、真っ先に飛び出そうとしたのは竹谷と浜、そして綾部だったのだが。
自分が誰よりも先に足を踏み出していた時には最早自分が一番驚いていただろう。
「何処にいるんだ……高嶺！」
あいつはまだ、俺の豆腐を食べていないんだ！勝手に消えるなんて許さないぞ！
こんな時まで豆腐を気にかけている男、久々知兵助。
彼の脳内ではやっぱりどこかAのことを小馬鹿にしている部分があり、わざわざいなさそうな低木やらを弄って探している。
「別に心配とかではないが……」
あああ！と声を漏らし、頭を掻きむしる久々知。
そんな時、目を閉じていたということもあり、周りが見えていなかったせいで久々知は躓いて坂を降ってしまった。
ごろごろごろ！とお笑い漫画のように転がった久々知は、尻を突き出すようにうつ伏せに着地する。
「いてて……」と声を漏らしていれば、聞き慣れた腹の立つ声が耳に入った。
「……何やってんのあんた」
何事かと思い、慌てて起き上がれば、そこには……散々探していた高嶺Aが座っていた。
髪はぼさぼさ、服はボロボロ。
いつもとは真逆の格好で丁度いい岩に腰を下ろしているAは、久々知のことを呆れたように見上げている。
顔を見るなり憎まれ口を叩くAを見て、久々知は歯軋りを立てるが、なんとか堪えて、転んでしまった際に消えてしまった灯りを再度付ける。
揺らしながらAの方に向ければ、いつもの自信に溢れた表情とはかけ離れた、どこか自信のない表情をしていた。
「何って……お前を探しにきたのだ！」
「もう日は落ちてるわよ、時間の区別も付けられないなんてどんだけ馬鹿なわけ」
「バッ……！」
馬鹿とはなんだ！といつものノリで食いかかろうとした久々知だったのだが……ふとAの方を見た久々知は違和感を持った。
目元が少し赤らんでおり、よく見ると足を摩っている。
まさか、泣いたのか？
いや、まさかコイツに限って……
だが、よく見ると気にするように小さな音で鼻を啜っているようにもみえる。
「とりあえずお腹が空いたろ。飯を持ってきた。俺が狼煙をあげるから、その間に食うといい」
「……豆腐は食わないわよ」
「うるさいな」
呆れたように久々知はため息をつくと、そっと懐から包みを取り出す。
そこには、豆腐……ではなくおにぎりが入っていた。
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作者名：タジロ | 作成日時：2023年10月3日 9時
