114 とりあえず一安心? ページ20
「新野先生、お疲れ様です」 「いえ、皆さんもお疲れ様でした」
「数馬!換気だ!全部の扉を開けて!」 「はい!」
ひとまずは落ち着いたようで、新野は険しそうにしていた表情をいつも通りの緩やかな表情へと変える。
伊作は新野に伝う汗を手拭いで拭ってやり、医務室内では数馬が襖やら窓やらを開けていた。
「……さて、無視してるみたいになっちゃってごめんね。何か用かな?怪我?」
「____……二年い組の、綾部喜八郎」
伊作に呼ばれ、我に帰った忍たま……綾部は思い出したかのように「失礼します」と言って医務室内へと足を踏み入れる。
真っ白な包帯にぐるぐる巻きにされているAを見て、綾部は眉間に皺を寄せると伊作と新野に問いかけた。
「いーえ、この通り僕はピンピンしてます。この先輩は顔見知りだったので、何かあったのではと不安になりまして」
そう言いながら、綾部はAの寝ている布団の側へと腰を下ろす。
側ではくうくうと寝息が聞こえており、生きていることに少しばかりだが安心できた。
「伊作くん、あとお願いしても?」 「はい、新野先生。ありがとうございました」
新野は何か用事があるようで、伊作に話しかけるなり医務室を後にする。
新野が去ったのを確認すると、伊作は苦虫を噛み潰したような顔をして、側にあった水の入った桶に手を入れて手拭いを湿らせる。
ぎゅ、と絞るとその手拭いでAの見えている肌を拭ってやった。
「下級生との合同訓練だったんだって。くのたまの実技授業」 「……はあ」
「Aちゃん、崖で足を滑らせそうになった下級生を庇ったらしくて」
「そのまま……崖下へ転がり落ちちゃったらしくて」
伊作は言葉を詰まらせながら、綾部に伝えている。
なんでも、下級生のくのたまが泣きながら報告に来たようで、その後に続くようにシナが横抱きして連れてきたらしい。
その時のAの様子はとても直視できる状態ではなく、急いで保健委員会総出で手当に取り掛かったそうだ。
「A!」
ガタン!と大きな音が聞こえ、医務室にいた全員がそちらへと振り返る。
そこには、Aの友人がおり、顔を涙でぐちゃぐちゃにしながら肩で息をしていた。
「Aちゃんなら無事だよ、起きるまでもうちょっとかかるけど……」
「良かった……!本当に良かった……!」
転けそうになりながらも駆け寄り、その友人はわあわあと泣いている。
その様子を見て、綾部はただただ座り尽くしていた。
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Lynn - タジロさん» Lynnです。今見ました、戸部様を出してくれてありがとうございます!内容的には面白かったですし、これからもこのシリーズ、続いて欲しいと思ってます (8月31日 15時) (レス) @page45 id: b7c4ae609e (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - タジロさん» はじめまして!初コメントがこんなのですいません…作品は愛読しています!新野先生だったんですね…医学の心得があるからでしょうか?これからも応援しています! (8月19日 23時) (レス) id: 407aeb7a76 (このIDを非表示/違反報告)
タジロ(プロフ) - めろんぱんさん» はじめまして、コメントありがとうございます!ですね。高嶺の言っている通り房中術は授業で一度限りですが終えております。お相手は高嶺ちゃん資料集に書きまとめましたので顔ありの夢主が地雷でなければ是非ご覧ください……! (8月19日 23時) (レス) id: bcff2be84f (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - 主人公ちゃんは房中術をやったことがあるんですか…? (8月19日 23時) (レス) @page41 id: 407aeb7a76 (このIDを非表示/違反報告)
Lynn - タジロさん» タジロさん、仕事の方も更新の方も体に気をつけて頑張って下さい。昨日はなんか申し訳なかったです。 (8月6日 16時) (レス) id: 3d10a0695d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:タジロ | 作成日時:2023年5月10日 2時