110 勝手に話を進めるな ページ16
伊作は決めた。
一時的な恋仲役は田村三木ヱ門に任せようと。
珍しくAが普通の会話ができる人物。色恋の云々も本人同士からは感じないし、これ以上の適任はいない!
「一時的に!だよ!正式には認めないから!」
「どういうことです!?」
説明も一切なしに進めていくものだから、三木ヱ門は当然困惑。
浜と庄左ヱ門に至っては、火薬の本をその場で読み出す始末であり、側から見れば頭のおかしい状況でしかなかった。
というか、側から見られているのだが。
「なに馬鹿みたいなことやってんのおまえら」
「!高嶺先輩!」 「Aちゃん!」
側から見ていたのは高嶺Aだった。
いつも通りの忍び装束に着替え終えたAは、鼻水やら唾液で汚れた小袖を手に持ち、呆れたような表情でその光景を見つめている。
駆け寄ってくる庄左ヱ門にその小袖を手渡し、
「はい、あんたがやるっていったんでしょ」
と言うものだから、庄左ヱ門は軽く感動した。
やっぱりこの先輩、面倒臭くてなにも聞いていないように見えてしっかり聞いているのだ。
「はい!任せてください!先輩に似合うようにしっかり染め直してもらいます!」
「余計なことすんな」
頭巾のすぐ下にある広いおでこを指で弾くと、ビシ!といい音が鳴る。
「いて」と庄左ヱ門は声を漏らしたが、浜にはそれが羨ましく見えたようで、うぐぐと声を漏らしていた。
そんな中、伊作は口元に手を持っていくと、わざとらしく「おっほん!」と咳を一こみ。
庄左ヱ門は小袖を手に去ってしまっていたが、その場に残っていた浜と三木ヱ門、そしてAの視線は伊作に集中した。
「Aちゃん!お父様に説明する恋仲役は決まっているのかい?」
「……いや、まだですけど」
「じゃあ!恋仲役は三木ヱ門に任せたらどうかな!?」
「えええ!?」 「わ、私が!?」 「……は?」
声を漏らすAをよそに、伊作は熱烈に語り出す。
そんな伊作にAは呆れていると、そっとその言葉を遮り、Aは言った。
「いや、恋仲役なんてはなから誰にも任せる気ないですよ私」
「え!?そうなの!?」
「当たり前でしょう、忍術学園のやつらに頼んだりなんてしたら後が怖いですし。命が億単位あっても足りないですよ、私自 殺志願者ではないので」
「そ、そこまで言わなくても……」
つらつらと語っていくAを見て、伊作は呆れたように頬に汗を伝わせる。
そんな様子を見て三木ヱ門はほっと胸を撫で下ろしているが、浜は……
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Lynn - タジロさん» Lynnです。今見ました、戸部様を出してくれてありがとうございます!内容的には面白かったですし、これからもこのシリーズ、続いて欲しいと思ってます (8月31日 15時) (レス) @page45 id: b7c4ae609e (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - タジロさん» はじめまして!初コメントがこんなのですいません…作品は愛読しています!新野先生だったんですね…医学の心得があるからでしょうか?これからも応援しています! (8月19日 23時) (レス) id: 407aeb7a76 (このIDを非表示/違反報告)
タジロ(プロフ) - めろんぱんさん» はじめまして、コメントありがとうございます!ですね。高嶺の言っている通り房中術は授業で一度限りですが終えております。お相手は高嶺ちゃん資料集に書きまとめましたので顔ありの夢主が地雷でなければ是非ご覧ください……! (8月19日 23時) (レス) id: bcff2be84f (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - 主人公ちゃんは房中術をやったことがあるんですか…? (8月19日 23時) (レス) @page41 id: 407aeb7a76 (このIDを非表示/違反報告)
Lynn - タジロさん» タジロさん、仕事の方も更新の方も体に気をつけて頑張って下さい。昨日はなんか申し訳なかったです。 (8月6日 16時) (レス) id: 3d10a0695d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:タジロ | 作成日時:2023年5月10日 2時