はい、あーん！【忍たま】

28　優勝賞品買収済 ページ29

「さあ！始まりました！私たちくのたまの高嶺先輩はどちらの男の手に渡るのか！？正直、私が持って帰りたいです！進行は私、くのたまのユキが行わせて頂きます！」

ニコニコと楽しそうな笑みを見せながら、マイクを握るユキ。


「まずは五年い組の豆腐小僧こと久々知兵助！私たちが知らぬ間に高嶺先輩を独り占めしているとんでも野郎です！」
「は……え……？」
「何やら動きが止まっている様子ですが、強者の余裕でしょうか？」


ばっ！と風を切るようにユキは久々知へと手を向ける。
ユキが一言揶揄うと、くのたまから沢山のブーイングが響き渡った。
やれズルいだ、やれ先輩は私のだ等、恐ろしいまでに言いたい放題である。

ちなみに久々知を除く五年生たちが集まっている観覧席は何処よりも賑やかだった。

「ちょ、俺も出る！俺も出る！」
「止まれハチ！お前が出たらもっとややこしいことになる！」
「いいぞもっとやれー」 「三郎煽るな！！！」

主に竹谷八左ヱ門のせい。ストッパー頑張れ尾浜勘右衛門。


「対して出るは六年は組の不運大魔王こと善法寺伊作！高嶺先輩を譲らんとする佇まい……完全にお母さんです！お母さん！私たちの高嶺先輩を守ってください！」
「Aちゃんと付き合うなら僕を倒してからにしろ」
「目が本気です！」


次に反対側で睨みを効かせている伊作の方へと手を向けると、伊作は腕を組んでそこに仁王立ちしている。
そんな様の伊作に少しだけ引いていると、ユキはあることに気がついた。
……先程まで伊作の腕の中にいたAがいないのだ。

まず前提として、面倒なことを心の底から嫌うであろうAがこの状況を見て騒がないのがおかしい。
そう思ったユキは、キョロキョロと辺りを見渡す。
が、意外にもすんなりAは見つかった。

「おおーーーっと！今回の騒ぎの原因である高嶺A先輩！まさかの買収済み！沢山の米俵に囲われ満足そうです！」
「もうどうでもいいや」
「完全に全てを投げ出しています！」

と言うか、目に入らない方がおかしいだろう。
観覧席の中に一箇所だけ、米俵が山積みになっている部分があったのだ。
そしてそこのど真ん中に頬を綻ばせる美少女こと高嶺A。
ちなみに米俵の出どころは忍術学園の経費である。頑張れ潮江文次郎


こうして始まった、全員がぶっ飛んだ高嶺争奪戦。
結果がどうなるかは誰にも分からず、皆が心を躍らせた。
所で皆さん覚えてらっしゃいますか？

これ、食満留三郎のお話なんですよ。

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