つまらない女 ページ9
思わず舌打ちしてしまった。ちゃんと期間を開けていたのだが、やはり不自然だったか。
制服を着ていると不良が寄り付いてきやすいし、それで問題がおこったこともあまり、というか全くなかったのでそうしていたのだが、こんな噂がたっているとは。
今度からは私服でやった方がいいな。
不良は釣れづらくなるが、それもしょうがない。
で、だ。
「それだけでは質問の答えとして不十分だと思うけど」
「もし、その女がテメェだってんなら、俺はお前を止める」
「ふうん」
「あんな八つ当たりみてーな喧嘩やってりゃいつか恨み買って当然だ。いや、もう買ってるかもしれねぇ…」
「なるほどね」
思いの外きちんとした答えだったな。
さて、次は私が答えてあげなければ。
「その百合女生というのは十中八九私でしょうね」
「やっぱりな…なんでこんなことやってんだ」
「なんでって…さっきあなた言ってたじゃない。``憂さ晴らしみたいな喧嘩``って。まさにその通りよ。憂さ晴らし。ストレス発散」
「それなら、もっと他に方法あっただろ」
「そうかもね。でも私はこの方法が一番スッキリしたの。女で、お嬢様で、世間知らずだと見下した私にボコボコにされる不良達だなんて、面白すぎるでしょう。こんな笑えることないわ」
フっと鼻で笑う私に、晋助は眉をひそめた。
「お前、そんな奴だったかよ」と、絞り出すような声。
「あら、どんな奴だったかしら」
「バカだけど、筋は通ってる女だったじゃねーか」
「人って変わるものでしょう?まぁ、貴方は今でも変わらずバカやってるみたいだけど」
「んだと…?」
「違う?それに、私がしたことって筋が通っていないのかしら。だって私に先に絡んできたのはあっちでしょう?」
今日のは自分で絡みに行った気もするが、うちの生徒が先に絡まれていたわけだからセーフだ。私は助けただけ。
晋助は「そうかよ」と吐き捨て、千円札を二枚置いて席を立った。皿にはまだ食べ物が残っているというのに。
「何、もういらないの」
「あぁ」
「それに、お金…貴方の分だけで良いわよ。私は自分で――――――」
千円札のうち、一枚を渡そうと背中に手を伸ばした時だった。
「触んな」と晋助が低く言ったのは。
「は…?何、急に」
背に向けて差し出された千円札を、彼は振り向きもせずに振り払って、唸るように言った。
「お前、そんなにつまらねェ女になってたなんてな」
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作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時:2019年3月17日 16時