ワンチャン無いよ ページ7
ギャルはその声に「あ!晋助様!!」と声のトーンを上げて声の主に駆け寄る。
「一昨日、晋助様に殴りかかって来た野郎を見つけたんスけど……すいません。逃がしてしまいました」
「あんな奴、いちいち気にする必要無ェよ」
「でも……」
声の主であるのクソ偉そうな男の姿を見て思わず顔をそらす。
え?だって待って?まさかそんなのある?
“晋助様”って、高杉晋助のことだったの!?
忘れられないはずのその男が、そこに立っていた。
6年前、最悪の別れをした、あの男が。
「で、ソイツは誰なんだ」
晋助はギャルにそう尋ねる。うわ、ヤバイ。逃げ時を見誤った。
いやでも私も結構見た目変わったし、もう六年も前だし、ワンチャンあるぞ。
「あぁ、この子はアイツらに絡まれてた子ッス」
「……なぁ、アンタ」
そう言って晋助はこっちをじっと見る。
いやダメだこれ絶対にバレる!!もう不自然になっても良い!!逃げよう!!!
そう思って、一歩踏み出した時だった。
「何やってんだよ、A」
あっさりと腕を捕まれ、それを止められたのは。
……ワンチャン、無かったなぁ。
高杉晋助。私の小学生の頃のお友達。以上。
いや全然以上じゃないんだけどね。
もっと複雑な……まぁ、長くなるし良いか、どうでも。とにかく私が転校した時のお別れの仕方が最悪で、それから一度も会っていない。
そんなことよりも今重要なのは、何でこのグレにグレている様子の高杉晋助と外面だけならパーフェクト金持ち女子校生のこの私がファミレスで向かい合って飯を食っているのかってこと。
そもそも何で一緒に飯を食うことになったのかもよくわからんのだけどね。そんな軽くご飯とか出来る仲じゃないでしょ私達。
コイツ、あの日のこと……忘れてるわけないよな、まさかな。
彼を訝しげに見ながらチキンドリアをつついていたら、あちらから先に口を開いた。
「アンタ、百合女だったんだな」
「……えぇ。貴方はその学ラン、銀魂高校かしら」
「あぁ」
「……」
「……」
会話が終わってしまった!!
どうすれば良いのだろうか。さっきはあちらから振ってくれて、話題を広げられなかったのは私の落ち度でもあるわけで。私から振った方が良いと思われるがしかし。
共通の話題が無い!!
どうしよう、テレビの話とか?コイツテレビっ子だっけ?いやダメだわ私が見ない私がテレビっ子違う。
「百合女ってどんな感じなんだ」
またもや気を使ったのか、気まぐれなのかよく分からないが再びあっちから話をふってきた。
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作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時:2019年3月17日 16時