前進 ページ47
「あ、天野。どうしたんだよこの姉さんは。異様にテンション高いし、それに家以外で歩いて……」
「コイツ、お前が家出したって聞いて血相変えて母親に会いに行ってな……」
「ちょっと待って天野。姉さんのことコイツって呼ばないでよ」
「お……お嬢様がっ」
なんでそんなに嫌そうなんだよ。てか外だしここうちの病院なんだから少しくらいちゃんとしろよ。
「俺らの側の仕様人がお前が母親の部屋から飛び出していくのを見てたんだよ。それをお…お嬢様に言ったらブチ切れて最上階から飛び出して行きやがって……」
「ふふっ。久しぶりにお母様のお部屋に行っちゃった。車椅子に乗るのも忘れてね」
クスクスと満足気に笑う姉。え、これ笑い事なん?母さん大丈夫だったん?
「ちなみに母親は今頃寝込んでいるはずだ」
やっぱり……!!天野が私の考えを察して的確な口出しをしてくれた。
「『私の妹に何言ったのよ!』ってね。私、初めて人に向かって大きな声で怒ったかもしれないわ」
「かもっていうか間違いなくそうだろ……」
「そうかしら?―――ねぇ、聞いたわよ。A、剣治さんと婚約させられそうになったんですって!?」
「あぁ、まぁ、そうだけど……」
母へ怒りをぶつけた時の熱がまだ残っているのか、やたらと声が大きい。ここ病院なんだけどな。
「父様のために嫌いな人と結婚なんてする必要ないわ!!」
「いや別に好きじゃないってだけで嫌いなわけじゃ……」
なんか妙な勘違いをされていることが少し気になるが、訂正は……まあいいか。今別の話すると会話が混乱しそうだし。
「母様にね、すべて話したわ。とっくの昔に歩けるようになっていたこと……私が、この家を出たいこと」
「……」
「Aがどうしたいのかは、まだ伝えてないわ。さすがに婚約はやめさせたけれど。あの家に残るのか、家を出て別の仕事をするのか。それは貴女がちゃんと考えて決めて、自分の口で言わなきゃいけない」
「うん。ありがとう、姉さん」
「というわけでさっそく私、家を出るから」
「話のテンポ早くない?」
「在宅バイトってやつずっとやってたから、お金はそこそこ溜まってるのよ。それで進学しようと思うの。かなり遅くなっちゃったけど」
「姉さん在宅ワークしてたの!?」
初耳すぎてびびるわ。まあ姉のことだし、あの期間に何もしていないわけがないとは思っていたけど。
それにしても進学か。試験も受けられなかったこと、涼しい顔して話してたけど姉なりに後悔しているのかもしれない。
「良いと思う。応援してる」
「Aならそう言ってくれると思ってた!」
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作者名：mire | 作者ホームページ：http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時：2019年3月17日 16時
