君のせいじゃない ページ46
「何だよ。やたらぐったりしてんな」
「アンタのせい……いや、いいや。そんなことより晋助様のところに行ってやってください」
「晋助のところに?今、病院にいるんだったっけ?」
「そうっス。ここの近くの……えっと、なんでしったっけね。大きめの……」
「―――それってまさか」
そのまさかだった。
雨ノ宮家の経営している病院じゃん、ここ。
何でここにしたんだよ……と男どもに怒鳴りたい気持ちをおさえつつ、母と喧嘩して家を全否定したばかりの私は院内へと入っていく。それはもういけしゃあしゃあと。
でもまあこんな末端にまでそんな話が伝わっているわけもなく、顔見知りの看護師に普通に挨拶された。まあそうだよなあ。
ロビーで座って待っていたら、診察室の一つから晋助が出てくるのが見えた。
そばには来島さんの仲間の二人もいる。
その姿をみて思わず立ち上がった。
「晋助!!」
私の声に気付いた晋助は二人に何か言って帰らせてしまった。それを数秒見送ってからこちらに歩いてきた。
「……よォ」
「何がよォだよふさけんな。ケガは?」
「軽い打撲が三ヵ所と骨にヒビが一つだってよ」
「普通に大ケガじゃんか」
脱力して再びソファーにへたりこむように座り込む。
そんな私に「こんなもんかすり傷だ」と呑気な声。
「お前……かすり傷の意味知らないタイプの人間か」
「そのくらい知ってらァ」
「知ってる人間はそんな発言しねーよ」
これ以上言っても、コイツは頑固なので考えを変えない。やめにしよう。
「Aこそ、顔どうしたんだよ」
「ん?あぁこれ?来島さんに貼ってもらったの。彼女案外器用よね」
「俺のせいか」
「はぁ?何でそんなこと言うんだよ。私が弱かったせいだって」
「……」
黙ってしまった。何でだ。
この空気苦手なんだよなぁ。けどこれといった話題もこれ以上思い浮かばない。
しょうがないので目線を少しそらして、気まずい沈黙に耐えていた。
私達のものではない凛とした声が響くまでは。
「A!!」
私の知る中で最も綺麗な声を、予想外の場所で聞くことになり動揺を隠せない。
そこにいたのは姉だった。隣には天野も立っている。
そして姉も"立っていた"。
「姉さん!?な、何して……」
「やったわA!!私達、解放されるのよ!!」
かつてないほどテンションの高い姉に訳の分からないまま抱きつかれる。
晋助は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。
一体何があったのか知りたいのに、ひゃーひゃー言っていて全く話にならない姉に困っていると、天野と目が合った。
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作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時:2019年3月17日 16時