意味 ページ44
なんて思っていたら、また子さんがいきなりこっちを向く。
「な、なんだよ」
「アンタに晋助様を任せるっス!!」
「はぁ!?」
いきなり何言いだすんだよこの人は!
なんで今この状況で一番標的になってる奴を私に預けるんだよ。というか!!
「そんなめちゃくちゃ不本意そうな顔で言われましても……」
「だってそんなん私がずっとそばにいたいに決まってんじゃないスか!!」
怒られてしまった。
また子さんは震える声で「でも」と続ける。
「晋助様とちゃんとお話してください。晋助様の意思をちゃんと尊重してください。晋助様は、何が正しいかじゃなくてどうしたいかで話したいんスよ」
泣きそうに、また子さんは笑う。
「ちゃんと自分のことで我儘にならないと、どっかでガタが出ちまうっスよ!」
それはそれは美しい笑顔で。
「いやそういうことじゃなくてね?私もさすがに男一人抱えてこんな不良だらけの所を突破できないって話」
「そんな話ィ!?いやそれ今言う雰囲気じゃないっスよね!?」
「一番重要だろ!!アンタ晋助が死んでもいいのかよ!!」
「なら私がサポート致しますわ」
ギャースカ喚いていると傍らにケーキが来てそう言った。
「高杉晋助の為ではありません。Aさんの為です。だからそんなに警戒しないでください」
一瞬戸惑うまた子さんにそう言って、晋助の肩を抱える。「先ほどの蹴りを見たところAさんの方が私より強いんですから、この方が良いでしょう」とのこと。
「私が運びます。Aさんは道を作ってください!」
「中は私らに任せるっス!!」
「……分かった。また子さん、お願い。行くぞ―――伊吹」
「―――っ!!……はいっ!!Aさん!!」
そして私は向かっていく。春雨高校の男達へと。
背後から「晋助様を追わせるな!!」とまた子さんの声が響く。
不良の相手をして鬱憤を晴らしているとき、意味の無さを分かっていてもやめられないその行為に酷く虚しさを感じていた。
けれど、あの行為に意味をこじつけるとしたら、きっと今日だろう。
今日のために、私はアレを続けていたんだ。
――――晋助を助けるために!!
「……困ったものですわね」
呆れるように呟く伊吹の声は私には届かない。
「貴方のために何かしているときが一番活き活きしているだなんて」
こんな野蛮なことなのに、と晋助に笑いかける。
晋助は息も絶え絶えに「まったくだ」と小さく笑った。
声に喜びを含みながら。
「―――あれは確かに、俺が惚れたAだよ」
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作者名：mire | 作者ホームページ：http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時：2019年3月17日 16時
