猿共 ページ5
彼女のケーキ屋は商店街の一角にある。
ようやく甘ったるい空気からは解放されたが、午後5時近くということもあり人が多い。私としてはあまり心地よい空気では無い。
早く帰りたい。
「あ……あれ」
クラスメイトのケーキ娘(結局名前は思い出せなかった)が、口元に手をやり何か恐ろしいものでも見たような様子で呟いた。
その演技らしさにややイラッとしたがとりあえずの視線を辿る。
そこにいたのは他校の不良に絡まれているうちの生徒だった。不良は男子生徒で複数人。対してうちの生徒は二人。
明らかに不利だ。
「会長、アレって……」
「えぇ、うちの生徒ですね」
「どうしましょう、警察を呼んだ方が良いのでしょうか」
こんなことごときで。これだから温室育ちは。
しかし、コイツが一緒にいるわけだから無視するわけにもいかない。生徒会長が不良に絡まれた生徒を見殺しにしたなどと吹聴されかねないからな。
しゃーないか。
「必要ありません」絡まれている生徒の方へと進む。着いてこようとするケーキ娘を「そこに居てください」と制する。
着いてこられても迷惑だ。
「ちょっとすみません」
「あ?」
不良のうち一人が振り返る。全くセンスの無いピアスを複数付けている。
二人の女子生徒はようやく私に気付いたのか、「会長!」と泣きそうな声を出した。
「そちらの二人はうちの生徒ですよね。迷惑しているように見えるのですが一体何のご用ですか」
「何、君も百合女の子?ただ俺らは暇なら遊ばねー?って誘ってただけだよ」
「そうですか。ですが二人は乗り気では無さそうです。引き下がるべきでは」
「照れてるだけだって。それとも、ねーちゃんが遊んでくれんの?」
「そちらの二人を帰していただけるのなら、私で良ければお付き合いします」
その言葉に不良共は盛り上がる。
どうやらお嬢様なら誰でも良いらしい。短絡的な思考の猿共が。
「申し訳ありませんが、この二人を送ってくれますか」と、ケーキ娘に女子生徒を預ける。
「でもっ……!会長は」
「大丈夫です。晩御飯に間に合えば、少しくらいの寄り道なら」
「ホラ、行こうか」
「えぇ」
ケーキ娘と別れて不良共に連れられるままに歩いていると案の定人通りの少ない道へと導かれた。
本当に猿は思い通りに動いてくれて助かる。
便利だな。
――――――1、2、3……5人か、余裕。
「何して遊ぶんですか?」
「何って……まぁまぁ、君が知らないようなこと――――――グァッ!?」
不良が吹っ飛んだ。
ダジャレでは無い。事実だ。
私の拳が顔面にクリティカルヒットして、不良が吹っ飛んだ。
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作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時:2019年3月17日 16時