二人の少女 ページ37
「あんなに動揺している晋助様は私も初めて見たっス。もしかしたらアンタに関係あるかも、と思ったんスけど」
「そう。どちらにしろ私には分からないわ」
だから手を離してほしいという意味だったのだが来島さんには全く伝わっていないみたいだ。それどころか掴む力はより強くなった気がした。何だコイツ。
来島さんは私の目をしっかり見て話し始めた。
「私、分かるんスよ。すごく悔しいけど。ずっと晋助様のこと見てきたから。
今、晋助様に必要なのはアンタっス」
「……そんなこと言われても」
だったらなんだと言うんだ。そもそも私はもう彼とは関わらないつもりだし。
だいたい、私が必要って何だ。
「本当に、もういいかしら。貴女が高杉さんを探したいならそうすれば良いけど、私を巻き込まないで」
そこまで言ったところで、着信音が響いた。私のものではない。
ということは。
「ハイ。何スか武市先輩」
コイツのか。
ところでこの子、電話しているのに私の手を全然離してくれないんだけど何なの?
「え、どういうことっスか!?」
なんか一人で盛り上がってるし。
来島さんはゆっくりとこちらと目を合わせる。
「……なんですか」
「春雨高校の連中が晋助様と……百合女の話をしているのを聞いたって奴がいるそうっス」
「――――え?」
百合女の?春雨高校っていったらここらでは有名な不良高校だ。
そんな学校の生徒と、何故うちの生徒が?
「人質っスかね」
「高杉さんって、私以外に百合女に知り合いはいるの?」
「いないと思うっス。少なくとも私は聞いたことが無いっスね」
私のことを知らなかったあたりでやや信憑性が薄いが、高杉のような男と知り合うような人間が百合女にいる可能性はまあ少ないだろう。
「そうよね……でもそれっておかしくないかしら。本当に百合女に知り合いがいないとなれば、その生徒は人質として機能するかしら」
「確かに、女とはいえ他人をわざわざ人質にしようなんて考えないっスよね」
だとすれば、まさか。
「私の名前を出して脅されたのか?」
その生徒が今人質にされているのか、その時に話を聞かれただけなのかは分からない。
でも、その生徒が私の名前を出した可能性は大いにある。
「もし本当にそうなら、もう関係ないとは言わせないっスよ…………!!」
来島さんの表情が目に見えて険しくなる。
口が滑ってしまったことをこんなに後悔したのは初めてだった。
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作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時:2019年3月17日 16時