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否定 ページ34

ま、いっか。正直にいっちゃお。隠したって他の良い言い訳みつからんし。

「高杉晋助と会っていました」

「高杉?あぁ、あの子ね……何故あんな子と会っていたの。貴女にはもう関係の無い人間でしょう」

「そうですね。でも安心してください。もう会いに来ないように言ってあります」

「そう、分かっているじゃない。さて、前置きはこのくらいにしましょうか」


え、この話前置きだったの。この緊張感で?


「他にも何か話があるんですか」

「えぇ。実は今日お義父様に会いに行ってたの」

「お爺様に?一体何故」

「跡継ぎについて、少し話があってね」


うちの家は3代に渡って続く私立病院を経営している。今の院長は祖父だが、次の院長は長男である父で決定しているはずだ。


「話って、跡継ぎは父様だと言われてたじゃないですか。一体何の話があるんです」

「貴女、従弟の剣治(けんじ)さんは覚えている?」

「えぇ、まあ」


剣治さん、というのは父の弟の息子にあたり私より2つ年上だ。別に覚えなくてもいい。


「彼がどうかしたのですか」

「一族の一部が次の次の跡継ぎは、彼が良いのではないか、と言われているの」

「な……っ」


そんな!?
だって、それは私のはず……というか、本来は姉のはずなんだけど。
それでも、姉が跡継ぎ第一候補から外れてから私が後を継ぐって聞かされて、私もそのつもりで今まで自分を殺してきたのに。
何より。

それじゃあこの家を私のものにできないじゃない!!


「それで、困ったことに剣治さんが跡継ぎになってしまうと、貴方の父様ではなく叔父様が次の院長になることになるの」

「そうですか。でもまだ決まったことじゃないんですよね」

「えぇ。けれど不安要素は摘んでおくべきだわ」


この時点で、なんとなく母の言いたいことは分かっていた。


「貴女、剣治さんと婚約なさい」


やっぱりか。

確かに法律上いとこ同士の結婚は問題無い。そうすればもし私が後継ぎになれない場合も父様が次の代を継いでも違和感は無いだろう。
けれど。


「私はもう後を継ぐことはできないのですね……」


「…そうなるわね。まあ、女が跡継ぎなんて話は凪だから成立していたのよ。医者の世界はやっぱり男社会だから」

「私は、私では姉様の代わりには成れませんか」

「……そんなことは」


あぁ、私って


「最初から分かっていたことでしょう」


何だったんだろう。




・・・

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作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/  
作成日時:2019年3月17日 16時

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