待ち伏せ ページ21
桂と一緒に帰るのが死ぬほど嫌だったので、少し時間をずらして退店した。桂を先に帰して、10分後に私も席を立つ。
「あのっ……」
店を出てすぐに、背後から声をかけられた。気づかないフリをしようかとも思ったが、その声に聞き覚えがあったので止む無く振り返った。
そこには、例のケーキ屋の女が立っていた。おさげにしている髪は風で少し乱れている。
……一体いつからいたのだろうか。
「何ですか」
「あの、つけてきたとか、そういうのではなくてっ、その……」
「何故ここにいるのですか」
「私はただ、会長が心配でっ」
なるほど。それでここで待ち伏せしているのはつけてきたというんじゃないかな、ケーキ娘よ。
私の中での特徴にストーカーも付け足すぞ。ストーカーケーキ女。字面だけで厄介そう。
いや、しかしもしかしてこれは……さっきの素の私を見られたのでは?
「……貴女から見て、どうですか」
「何が、ですか」
「あの女装をした男子生徒のことです。見ていたんでしょう、私たちのこと。彼の言動についてどう思いますか」
「え……私は外にいたのでずっと見ていたわけでは……声も聞こえなかったので、私には判断できかねますわ」
「そうですか」
それなら素の私のことも見ていないのだろう。おそらく。
つけてきたという事実はまだ気持ち悪いが、これで一安心だ。
「彼とどんな話を」
「彼のあれは趣味ではなくて男子である自分がうちの学園の校門の前に立っているのは不自然であるという彼なりの気遣いだったそうです。次はふつうに来るように、と言いました」
「で、でもっ。Aさんっ」
「あなたこそ、いつから私達のことを尾行していたんですか」
「尾行だなんて!私は校門でAさんと彼が話しているのを見て不安になって!」
なんだそれ、最初からじゃねえか。
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作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時:2019年3月17日 16時