言伝 ページ20
「まあ、そんなこともあったから、あっちも聞きたいこと全部聞けなかったんでしょうね」
「で、俺を使ったと」
「おおよそはそんな感じでしょ。予想だけど」
これで桂がいきなり訪ねてきた謎はとけたが、どうしてもしっくりこない。
だってアイツ、私に堂々としてる私じゃなくなった私は私じゃねぇみたいなことを言ってたくせに。何自分はコソコソおつかい寄越してんだよ。
腹立つ。
「そうね……桂。一つ言伝を頼めないかしら」
「高杉から頼まれた二つの質問の答えを伝えろということなら、俺はそのつもりで来たはずだが」
「いいえ。言ったでしょう。"一つ"言伝を、と。私が答える質問は一つだけ。それに一つ言伝を添えたいの」
「一つだけにしか答えないのか?何故だ」
「まーまー内容聞きゃ分かるわよ。私が答えるのは『私の近況』の方」
桂は未だよく分かっていないようだったが、話を続ける。
「近況は…何から言えばいいのかしら。とりあえず生徒会長をしているわ」
「生徒会長だと……!?」
桂が面白いくらいに衝撃を受けている。なかなか愉快だ。
声を弾ませて私は続ける。
「それだけじゃないわ。成績だって主席よ」
「しゅ……っ!?お、俺の聞いた話では、百合女は毎年難関大学合格者多数の偏差値のかなり高い学校だったはずだが!?」
「そうよ。その学校で私はトップを張っているの」
自分の顔を自分で見ることはできないが、恐らく今の私はめっちゃドヤ顔をしていることだろう。
桂は相当驚いているようで「あのAが…嘘だ…」とうわ言のように繰り返している。さっきからコイツ失礼だよな。
「アンタがどんだけ衝撃受けてるとかどうでもいいからさぁ、言伝聞いてもらっていい?」
「脳がついていかないんだが」
「あぁ、別に理解しなくてもいいのよ、アンタは。伝えるだけ伝えてよ」
「な、なるほど。承知した」
そうだな……何と言えばいいのだろうか。
……何と言えばアイツは出てくるのだろうか。
いや、簡単なことか。
「『聞きたいことがあんならお前が来い、クソチキン』って言っといて!!」
アイツが私の挑発に乗らないわけがない。
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作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時:2019年3月17日 16時