【銀魂3z】失望しないで高杉君 (ページ12)

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真相ページ12

車椅子を押して庭園に入る。
中央にあるガーデン用の机のところで姉の車椅子を止めて、向かい側の椅子に座った。

「ま、そんな歪な形でも食べてみると案外美味しいかもしれないし?さっそく食べてさしあげましょうか」

冗談めいてそう言うと、嬉しそうに姉は頷いた。さて、肝心の味は……

「なんか湿っぽくない?」

外はガリガリ、中はしとしと。これはしっかり焼けていないですね。
そう伝えると、姉は「うそぉ!?」と眉を下げた。

「レシピ通りだと思ったのに……」

「姉さんにも出来ないことあんだな。意外」

「うーん、何がいけなかったのかしら」

「つか、なんでいきなりお菓子作り?本とか草とか飽きちゃった?」

「草じゃないわ花よ」

ちなみにここで草とは、姉がこの庭で育てている植物のことである。

「そういうわけではないのよ。ただ……」

「私、ずっとこのままじゃダメだって思って」

姉は自分の足に目を落とす。

6年前、姉は交通事故に逢って足に酷い怪我を負った。医師には歩けるようになるには長期のリハビリをする必要があると言われた。当時姉は高校三年生で大学受験を控えていた。

父と母は姉の足が動かなくなったと聞いて、その事実を世間に隠そうとした。うちは有名な市立病院を経営する一族で、第一子で長女の姉はそれまで両親の期待を一身に背負ってきた。
私は当時完全に放任されていたので姉と話すことは無かったが、漠然と尊敬していた。

それを両親(アイツら)は簡単に切り捨て、こうして屋敷の最上階に姉を閉じ込めているのだ。

この庭園は両親が外に出られない姉の為に元あった部屋を取り壊して作らせたものだ。
まるでこれで満足しろとでも言うかのように。

で、小学生の頃から有名私立である百合女にぶち込んで手塩にかけて育ててきた姉を失った両親は、次は私に期待の矛先を向けてきた。
それが小学六年生のときの転校の真相だ。
晋助には申し訳ないが、当時やんちゃだった私も、さすがに受け入れざるをえなかった。

そのくらい当時の我が家は荒れていた。反対なんてすれば心中さえしてしまいそうだった。

そのくらい姉はこの家にとって大きな存在だった。

「このままじゃだめったって、ならどうすんだよ」

「どうって、そうだな…まずは一人で暮らしてみたいかな」

「両親(アイツら)が許すわけないでしょ」

「でも少しずつでも何かしないと、私」

姉には、もう一つ秘密がある。

「こんな所で死にたくないわ」

「じゃあどんな所で死にたいの」

「そうね…」

姉は考えるように呟くと、ふわりと“立ち上がった”。