【イナGO】お嬢様のお気の召すままに。【天河原】２ (ページ28)

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第五十八話ページ28

喜「お嬢様が昔言った事のせいで俺たちが婚約者になったと思ってるなら、誤解です。」

喜多がそう言いながら私の前に跪く

真剣な顔で、まっすぐ私を見ながら。

喜「俺たちは自分の意思で、今ここに居るんです。

お嬢様のせいでも、旦那様のせいでもありません」

「そんなの、分からないじゃない…っ」

少し目を伏せる。

さっきまで、この四人の事なんてどうでもいいって思っていたのに。

ちょっと関わって、ある程度知ったら婚約解消しようって言おうと思ってたのに。

春奈先生の話を聞いたせいでこんなにも気になるなんて。

喜「今朝言ってくれたじゃないですか。

認めたわけじゃないけれどこれから俺たちの事、知っていってくれるって。

俺たちはそれで良いんです。お嬢様と一緒に居れるなら…それがどんな理由でも。

たとえ、選んでもらえなくても。」

ズキッと胸に何かが刺さる感覚がした。

痛い。

腕が？

ううん、心が。

心が、痛い。

「自分、の気持ちを…整理する時間を頂戴」

ごちゃごちゃで、考えても考えても答えなんて出てこない。

自分が何がしたいのかも、気持ちも全部分からない。

喜「はい。

じゃあ俺は授業に戻りますね。

先生、お嬢様をよろしくお願いします」

春「え、えぇ…分かったわ」

喜多は微笑んだまま、私から離れてそのまま保健室を出て行った。

少し離れた所に居た春奈先生は、喜多が出て行ったのを確認してから私の背中を摩る。

春「Aちゃん…大丈夫？」

「春奈ちゃ…っ私…もう分からない…!!

昨日から色んな事がたくさんありすぎて…頭がごちゃごちゃで…

自分の気持ちも、どうしたいかも全部全部分からないわっ…」

春奈先生の声を聞いて涙が溢れる。

春奈先生は私を抱き寄せて、頭を撫でた。

優しく撫でる春奈先生の手が暖かくて、涙が止まらなくなる。

「私は…ずっと京介が好きだったの…

や、っと…やっと付き合えたのよ…っ」

春「えぇ、知ってるわ」

「なのに、なのに…っ」

言葉が出なくなって、春奈先生を抱きしめながら小さく声を出して泣く。

春奈先生にだけ分かる声で。

小さく小さく。

私の気持ちの整理がつくまで、春奈先生は私を抱きしめてくれた。