【イナGO】お嬢様のお気の召すままに。【天河原】２ (ページ29)

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第五十九話ページ29

春「落ち着いた？」

「えぇ、落ち着いたわ。

泣いた分、ある程度気持ちの整理もついた。

ありがとう、春奈ちゃん」

春「こらっ、学校では先生、でしょ？」

ふふっと小さく笑って春奈先生の手を握る。

いっぱい泣いて、思った事をそのまま言葉にし続けていた私。

言葉にすることで、ごちゃごちゃだった頭の中は結構スッキリした。

やっぱり私は、京介が好き。

今までたくさん、京介の頑張ってる姿を見てきた。

フィフスセクターで頑張ってた京介も、雷門に来てから頑張ってる京介も。

京介の怒った顔も笑っている顔も。

本当にたくさん、見てきたの。

真剣な姿に、惹かれたの。

これからも京介と一緒に居たい。

だからこそ、喜多たちの事もちゃんと考えなくちゃいけない。

その答えは、今朝と変わらないけれど。

彼たちのことをちゃんと知ってから、それから決めればお父様もきっと文句を言わない。

円「わりぃ、遅くなった！」

ガラッと保健室の扉を開けて息を切らした円堂監督が帰ってきた。

春「円堂さん、遅いですよ。

何してたんですか？」

春奈先生が私から離れて円堂監督の傍に行く。

私はさっき喜多に渡された学ランに袖を通す。

初めて着る他校の学ラン。天馬の同じくらいの大きさ…だと思う。

でも私にはやっぱり大きくて、ちょっとムカついた。

ぶかぶかの袖で顔を覆うと、喜多の匂いがふわっと香る。

落ち着く匂いがして、ムカついてもやもやした心がスッとした。

扉のところで円堂監督と春奈先生が話し続ける。

泣いた事で、疲れたのか目を開けていられない。

座っているのも難しくなってきて、ふらふらしながら椅子から立ち上がる。

すぐ近くにあるベッドまで歩き、倒れるように横たわってそのまま眠りについた。