【イナGO】お嬢様のお気の召すままに。【天河原】２ (ページ6)

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第三十六話ページ6

「…わからないわ」

紙を開いて中を見てみたが、良くわからない。

何かが書いてあるのはわかるけど、何を書いたのかが分からない。

見てわかるのが、紫の色鉛筆で歪な丸がたくさん集まったもの。

緑色で紫の歪な丸に繋がっている線も描かれている。

「花…？に見えないこともないけど…。」

剣「スターチスですね」

「わあ！京介!!」

突然後ろから声をかけられ、ビックリして体が跳ねる。

制服に着替えて荷物を持ってきた京介。

帰ってきたことに気づかなかった。

「京介、これ何か分かるの？」

剣「えぇ、その絵は見覚えありますので。

それより、なぜ先輩がそれを持っているんです？」

隣に座りながら京介が私の顔を覗き込む。

なんか、怒ってる…？

「制服の、ポケットに入ってたのよ。

でもいつからあったのか分からないわ。

ねぇ、これは誰が書いたものなの？」

紙をテーブルに置いて京介の顔を見つめる。

京介はまた眉を下げてため息をついた。

剣「隼総ですよ。

母親が、好きだった花らしいです」

「隼総が描いたの⁉

なんというか…下手ね」

あの顔からは想像できないほど酷い画力。

これが画伯というものなのね。

蘭丸よりは…マシだけど。

剣「先輩は、隼総のこと何も聞いてないんですか？

一応、婚約者なんですよね」

お弁当を広げながら京介が問いかける。

婚約者、という単語にまたビックリして鼓動が早くなる。

京介も知っているんだった。

なんだかちょっと気まずくなる。

「何も知らないわ。お父様からも、本人からも何も聞いてないもの。

隼総の事で知ってるのは、他人がダメって事。昨日の夜吐いてたの。

でもあれが本当かなんてわからないわ…。」

朝の事を思い出しながら京介の問いに答える。

思い出すとまた頭が痛くなる。

剣「…先輩」

「なぁに、京介」

京介の顔を見ずに紙をポケットにしまいながら返事をする。

剣「俺を見て」

京介はまた私の顔を覗き込んで、ちょっと怒ったような顔でそう言った。