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夢想する揺籃 ページ17




「その感じ、もう捕まえたっぽいね?」

ちょこん、と視界から現れた、やけにリアリティのある耳と、ひらりと舞った赤マント。目線を下げれば自身の立てた予測はやはり間違っていなくて、あからさまに顰めた顔に彼女は笑っていた。ああやっぱこの人、苦手なんだよな。“食えなくて。”

「…なんのことっすか?」
「あはは、そこでしらばっくれても意味無いってわかってる癖に。」

きゃは、と愛らしく笑う姿は齢相応のようで、簡単に主導権を奪われたような感覚が尾を引く。会話を交わした回数こそ多くないが、何となく、己に他人ほどの好意まで持たれていないことくらいは察した。気づかれない程度に小さく息を吐き、月を帯びた瞳と目を合わせる。

「そこら辺はAに聞いてください。その方がそっちも楽でしょ。」
「…お〜、中々口割らないね。その感じ、かなりAちゃんに口止めされてるな?」
「…それ分かってるのになんで絡みに来たんすか。」
「童田たちが親友っていう前に同業者だからだよ。Aちゃんのこと、困らせたくないの。」

まあ、もうすぐ辞めるけどね。
飴玉を転がす要領でそう呟いた彼女は、目を見開き固まる僕をちらりと一瞥し、そして笑う。「…まじか、」と悟られぬように潜めたはずの声は明らかに震えていて、それでも言及してこないこの人は確かにAからの好意を受けるだけの人なんだろうな。
決して口にしてはやらないが、この人が彼女の支柱であったことを、知っているから。

「…まだ本人には言ってないんすか?」
「言ってないよ〜。辞めたあとなら教えて貰えるかな?」
「タチの悪い冗談やめてください」

スタッフらしき大人数名に囲まれ、屈折ない笑顔を振りまく恋人を眺める。自身の感情を少しでも漏らすことなく、そこに立ち続けるきみの笑顔を眺める。
目が合う。控えめに手を振られる。振り返す。その瞳が右に逸れる。また彼女が手を振る。隣が振り返す。

「私ねぇ、渋谷さんのことそんなに好きじゃないよ。」

視線は変わらず、互いに見つめている先は同じだった。余計な見栄でこれを執着と名付けようとしない僕と、現在の執念じみた行為に悪びれる素振りも見せない彼女。優位はこちらにあった割に、随分と余裕が無い。ただ、この人らがここに辿り着く努力を選ばなかったのは事実なわけで。今突き出せる現物証拠なんてこれくらいではあるけど。
それにしたって、たった1人に振り回されすぎなんだよな、僕ら。

「Aちゃんのこと何にも分かろうとしない癖に、我が物顔で隣にいるところとかさ。」

ああほんと、どいつもこいつも。


【切り抜き】童田明治の卒業について語る瀬崎→←その夜を掴んでいたかったから



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雨依(プロフ) - 続きが読めるこの日をずっとずっと心待ちにしておりました…!ありがとうございます! (4月30日 20時) (レス) id: 45e86ed873 (このIDを非表示/違反報告)
のいず(プロフ) - また拝読できることを心から嬉しく思います。ありがとうございます! (4月29日 11時) (レス) id: a172c60ad7 (このIDを非表示/違反報告)
ノルン(プロフ) - 2が読めるようになっててめっちゃ嬉しい!!びっくりして2度見かましました!ありがとうございます! (3月21日 0時) (レス) id: 01548bf821 (このIDを非表示/違反報告)
- 久しぶりに来たら2が見れてて大興奮です!!ありがとうございます!!!!(歓喜で枕全力で殴り悶えました(笑)) (2月10日 21時) (レス) id: 62feb543dd (このIDを非表示/違反報告)
miyaana(プロフ) - パスワード解除されてる!!! (2月10日 20時) (レス) id: dd83a370ce (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しちた | 作成日時:2023年1月27日 1時

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