便乗って素晴らしいですよね 【伊弉冉一二三】

流されて十二回目 ページ13

ピクリ。
彼女の言葉を聞いた彼が肩を揺らす。
おもむろに彼女がつぶやいた言葉が、彼の脳内で嫌に響く。

…急に静かになってしまった。
しまった、もしかして言ってはいけないことを言ったのか、はたまた話題選ミスか。
ここは一応謝っておこう。理由はわからないけど、それが礼儀というものなのだろう。

「ご、ごめんなさい。チンチロなんてムードもない話しちゃって。」
「え…？あ、あぁいいんだよ。僕も変な反応しちゃってごめん。」

そういってまたほほ笑む彼。でもなんだかいびつな笑顔に私の目には映った。
すると手元のお酒を一口飲んでから、GIGOLOさんはまた語りだす。

「チンチロなんて通じる女の子、あんまりいなかったからさ。面白いなぁ、って思って。」

そう言って軽く微笑むGIGOLOさん。ひゃああ、一回一回言うことがイケメンってこういうことか…。
なんか意識すると余計に緊張、というか壁を感じ始めた。まだ始まったばっかりなのに。





「一二三が一番弱い、か。」



小さく呟かれた彼の声も聞こえず、私は手元の水割りのクイっと飲む。






手に当たった結露の水滴は、嫌なくらいに冷たかった。

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