プロローグ ページ1
誰もいない夜の学園で、ピアノの音が聞こえるなんてどうでもいいうわさが聖セレナイト学園で聞こえるようになったのは、六月の梅雨に入ってすぐのころ。
そんなのどうせピアノが大好きすぎるピアノ馬鹿が夜までピアノを引いているだけだろ。頭使えばわかるよ。
私の名前は夏川 葵。
真っ黒な肩まではつかない髪と、真っ黒な瞳のごく普通の中等部三年生。
とにかく目立たないようにが私の精神。
いじめられたりしたら厄介だからね。
「転校生、やっぱりこのクラスに入るんだって！」
ああ、転校生ってこのクラスだったんだ。
朝からやけに騒がしいと思ったらそれが理由だったのか…
転校生来たらもっとうるさくなりそう…
転校生で喜ぶなんてガキか？ガキだったわ。
「男子!?女子!?」
「男子だってー！丘の上の洋館に住んでるらしいよー。各学年に一人づつ入るんだって！」
「イケメンだといいな〜。」
なんて話すクラスメイト。
イケメンなわけねえだろ。どこの少女漫画だよ。
丘の上の洋館？あんな家に住みたいと思うやつの気が知れないわ。
「そろそろ先生来るから座ろー！」
「転校生も一緒かな!?」
「多分な。」
ガラリ。
教室の扉が開いて、担任のくそメガネが姿を表した。
その後、先生に続いて入ってきた男子の姿に、クラスの全員が酔うようなリアクションをした。
すっごく整った顔立ちの子だったから。
ふんわりとした茶色の髪と色素の薄い瞳、少し垂れた目元に泣きボクロがあって甘い雰囲気を出している。
女釣るタイプだ。
直感でそう思った。
これが私の力。
はじめってあった人や通り過ぎる人すべての裏、嘘が見抜ける。
ポカンとしているクラスメイト達を見て、くそメガネも苦笑していた。
「転校生を紹介する。」
先生がキュッキュッと音を立てながらホワイトボードに名前を大きく書いていく。
霧島 昂
「霧島 昂だ。霧島自己紹介してくれ。」
「仲良くしてくれたらうれしいな。」
そう言って女釣り男子が微笑むだけでクラスの女子はキャーキャーと叫び
その状態に男子は絶望。
こいつとは絶対にかかわりたくないと思ったのに…
「昂は…、そこの空いてる席に座れ。」
そう言ってくそメガネがさしたのは私の前の席だった。
私の前の席って…、あったけ？
あっ、転校生が来るから増やしたのか。
転校生が机と机の間を通ると近くの席の女子はキャーキャー騒いでいる。王子様のお出迎えみたいに…
「ん？あんた香水つけてる？」
切り悪いけど次っ!!
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作者名：ただの小説好き元図書委員 | 作成日時：2022年9月11日 8時
