おねえちゃんだから. (ページ17)

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#17 ページ17

私が『おねえちゃん』になってどれぐらいの年月が経つのか

行く先々でもこんな声を掛けられるようになった

『まぁなんて気が利くおねえちゃん』

『その歳で偉いわねぇ』

『しっかりもので手がかからないなんて羨ましいわぁ』

とても皮肉にしか聞こえないけれど
少なくとも“世間から見た私”はそう映るのだろう

寧ろ好都合だけど

そう写っているのなら結構。万々歳だ

だってそれは“上手におねえちゃんを演(で)きている”ということなのだから

「ほら、ウタ。そんなに走ったら転ぶよ?」

甲板を走り回るウタに声をかけた

「だいじょーぶ！転ばないよ！」

「そんな事言って。転んでも“おねえちゃん”は助けてあげないわよ」

ニッコリと微笑めばウタはぶすっと顔を膨らます

「小さい子扱いしないで！私もう9歳よ！」

「はいはい」

声のトーン、笑顔の形
全てにおいて私は完璧に『理想の姉』を演じた

「ララの言う通りだぞウタ〜！」

「転んでも知らねえぞ〜！」

「もう！2人まで！」

ヤソップさんとルゥさんがウタを笑えば、ウタは丸い小さな頬を更に丸くさせて口を尖らせた

「本当に。いつか大怪我するわよ、ウタ」

頭を軽く傾かせて。右手を頬に当てながら私は“困り果てているけれど見守っている”フリをする
そうすればその内に

ああ。ほら

「ララの言う通りだ。ウタ」

父親の代表として、彼が顔を出し始めるから

「シャンクスまで〜！！」

「怪我して泣くのはお前じゃないか」

「泣かないわよー！」

「ほらほら。シャンクスを困らせたらダメよ、ウタ」

おしゃまで落ち着いた雰囲気を纏う、大人しい姉

私が築いた理想(すがた)は誰の目から見ても『面倒見の良いおねえさん』だった

「なによもう！ララまでシャンクスの味方しちゃって！」

「味方なんてしてない。私はウタの事を心配して言ってるの。ね?」

顔を覗き込み、優しく笑いかけてみれば。ウタはしゅんと顔を項垂れさせる

「分かった…ララが困るなら、やらない」

そう言うとウタは私に抱きついた

「だから！私から離れないでね！」

「！…はいはい」

クスリと笑い、ウタの頭を優しく撫でた

甘えん坊な妹に手を焼きつつも見守る優しい姉

その姿は正に“理想的な仲の良い姉妹”だった