第三話 ページ4
「あ〜…今日は転校生がいる」
教室に入ってきて早々、桐谷先生はダルそうに言った。
「えぇ!転校生!?」
新兎が驚きの声をあげる。
転校生…。やっぱ東京はわっぜか…。
「しかし先生。ここは東雲学園の特進クラス。特進クラスに転校生なんてあり得ることなのでしょうか?」
真面目に手を挙げて発言したのは、総理大臣の息子である針宮である。
その針宮の言葉に新兎も、確かに…と納得の言葉である。
「あ〜、転校生っていうとちょっと語弊があったな。正しくは…はぁ、説明すんの面倒くせぇから本人が来てから言わせるわ」
それでいいのか先生…。
そう心の中で呟きながら、その転校生の登場を心待ちにする。
「ねぇゆまぴ」
コソッと声をかけてきたのは新兎だ。
「ん?どうした?」
「転校生ってどんな子かな?超絶美人だったらいいなぁ」
「そうだな」
超絶美人でも、屈強な戦士のような男でも俺は誰でもよかった。誰か新しい人がこの教室に来ることが待ち遠しかったのだ。
「フンっ。ちょ、超絶び、美人でも、このはり、針、宮、藤次に、勝る、ものなど…」
「まだ女って決まったわけじゃねぇだろ」
「ハリーは相変わらず女子が苦手だね〜」
「そ、それは断じてないっ…!」
どうやら俺や新兎だけじゃなくて、針宮と獅子丸も転校生が来るのが楽しみのようだ。
そうして俺らが他愛もない話をしていると、ガラッと教室の扉が開いた。
「やっと来たか…」
そう気だるげに呟いた先生は扉のもとまで行く。
「先生、連れてきました」
扉の先にいたのは白華先輩と、黒髪の男だった。
転校生じゃろか…?
「悪いな白華」
「いえ。それでは俺はこれで。それじゃあ、学園生活を楽しんでね、犬上くん」
「はい、ありがとうございます」
白華先輩は黒髪の男に軽く手を振ると去っていった。
「全く…。ギリギリだぞ?犬上」
「すみません」
「まぁいい。早速だが手短に自己紹介しろ」
「はい」
そう軽く先生と言葉を交わした黒髪の男は、真っすぐこちらを向いた。
背中には、黒い何かを背負っていた。
「えぇ〜…はじめまして、犬上Aです。仕事で海外飛び回ってたら皆より入学すんの遅れちゃいました。まぁ、よろしく」
ガタンっ
と、椅子が倒れる音がした。何かと思い音のしたほうを向いてみると、獅子丸が驚いた表情で立っていた。
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作者名:蜥蜴 | 作成日時:2018年8月20日 18時