シルエット３

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ドアが閉まる瞬間。


気付いたら、電車、降りてた・・・







大毅、電車のドア閉まるか閉まらんかで、
凄い速さで駆けてってもうてさ。

追いかけたけど、見失ったし。


「あー、もお。
なんであんなに無駄に足速いねん」


諦めかけて、
歩道橋の階段の途中で立ち止まった時。


その上で、
ふうってため息ついてる大毅の姿を見つけた。


俺には気付いてなくて、
走る車を見下ろしながら、
なんか独り言言うてる。


なんて呼ぼう。


他人のフリされてんから、
大毅、言うんは、ちょっと悔しいし。


重岡、って言うんもな、
わざと距離置いてるみたいやし。


頭ん中で、逡巡した結果。


「しげ」


そう呼ぶ事にした。


大毅、ほんまギョッとした顔して、俺を振り返った。


「なんでそんな迷惑そうにするねん。
離れてる間に、俺んこと、嫌いなったん？」


会うてないねんから、
嫌われるような事も、しようがないねんけどな。


「と、と、か、神ちゃん」


しげも、俺のこと、なんて呼んでええんか、
一瞬、迷ってたけど。

忘れたふりは続けられへんかっただけで、
まあ、えっか、って。


「しげ、久しぶりやな。
楽器なんかやってるて、びっくりした」


「う、まあな。
フットサルもまだやってるけどな」


「そうなんや」


「神ちゃんは？
ダンス続けてるのに、なんで？」


「のに、って、なんで知ってんの？」


「う、まあ、
春に、たまたま見てん。
イベント出てたん」


「ああ、うん。
見てくれてんや」


俺の知らんとこで、
大毅は俺を知っててんや。

なんか、くすぐったいねんけど。


「神ちゃん、
ギターも弾くねんな。
サークル入ってなかったん？」


「ギターは独学。
サークル入るつもりなかってんけど、
さっきの後輩に無理矢理連れて来られてん」


「あのモデルみたいな子？
小瀧くんやったっけ？」


「うん。
なあ、なんで、俺のこと知らんふりしてんの？」


「それはっ・・・」


大毅が言い淀んでるから。


「彼女にバレたくないから？
昔、男と付き合うてたって」


ズバッと聞いたった。


「そんなんちゃうし」


なんでか、ムキになって返ってきてさ。


「やったら、なんやねんな。もお」


ちょっと笑ってもうた。


「何って。
なんか、恥ずかしかってんっ」

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