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ペンを置き、時計を見るともう夕食の時間になっていた
ネルさんのところに行こうと思い、椅子から立ち上がって大きく背中を伸ばす
久しぶりに料理の入ったワゴンを引きながら、日が暮れて夕日が差し掛かっている廊下を歩いた
 ̄
コンコンコン、と3回ノックをすると扉がゆっくりと開く
中から出てきたネルさんの翡翠色の瞳と視線が交わった
ne「…Aさん、」
私の名前を呼んで柔らかく微笑むネルさん
大分顔色が良くなったように思えた
『また今日から1週間お願いします』
ne「うん、お願いします」
早速夕食を運びに行こうと歩き出すネルさんに着いて行く
部屋に向かっている間、色々なことを話してくれた
ne「シャークん様が訓練に行くようになりました、とっても楽しそうで…」
ne「部屋に篭もることが無くなりましたし、城の外にもよく出るようになりました」
色々な話、といっても大体シャークん様の話題だが楽しそうに話すネルさんを見ると心の底から嬉しくなる
頬を緩めながら聞いていると、足を止めて突然私の方に向き直るネルさん
ne「これも全部Aさんのおかげだから…ありがとうございます、本当に」
『え、いえそんな何もしてませんよ』
突然の感謝に驚きながらも答えると、ネルさんはまた前に向き直って歩き始めた
ne「いえほんとに感謝しきれません、何かあったら今度は私が助けますね」
そんなことを言いながら耳を赤く染めているネルさん
こんなにも仲を深めることが出来た嬉しさで、胸がいっぱいになる
『じゃあお菓子作り手伝ってもらっても?』
ne「…ごめんなさい、私その分野得意じゃないので」
『いや私も得意じゃないですよ』
そう答えてもAさんはきっと出来ますよ、なんて言われとりあえず作りたくない気持ちがひしひしと伝わってくる
ne「もしかしてシャークん様から頼まれましたか」
『はい』
ne「あぁ、私がAさんを推薦しておきましたので」
『…なんてことを』
ネルさんからの発言に衝撃を受ける
推薦というか、もはや身代わりにされたような気がした
ne「練習はもうされましたか?」
『一応しましたけど…味は保証しません』
ne「大丈夫ですよ」
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作者名:ゆり | 作成日時:2023年4月29日 22時