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用意を済ませ、医務室の扉を開けるときんとき様がいた





『すみません、お待たせしました』


kn「ううん、こっちこそ急に来てごめんね」




そう言いながら医務室に入り、ベッドに腰をかけるのを視界に入れる





『どうしたんですか、こんな朝早くに』


kn「…何もないって言ったら怒る?」



『別に怒りませんけど』





そう言うと少しほっとした様子で胸を撫で下ろすきんとき様

頭のどこかでそんな事だろうと予想していた自分がいた





kn「何も無い」


『ですよね』




何となく気付いてました、と声を漏らせば少し笑いながら頬をかくきんとき様


何も無いのにこんな朝早くに来るなんて本当に変わっているな、と口に出せないような事を考える





kn「目が覚めちゃってさ、」


『なるほど、暇つぶしと』




kn「違う違う、違わないけど」






どっちですか、と呆れるように呟いてベッドの布団を畳む


緩んでしまっていた薬指の指輪を無意識の内にきゅ、と外れないように押し込む





kn「…なに、それ」


『え?』




布団を掴んでいた右手をぐい、と引っ張られ体が揺らぐ

何とか左手でベッドに手を付く事が出来た




『…あ、あの?』


kn「何この指輪」




そう言って目線の先にきらりと光る指輪


これは面倒な事になりそうだ





『これは頂き物で』


kn「誰」




『それはプライバシーが…』


kn「うん、で誰」





全く話を聞いていないきんとき様


こんな場面から逃げられる訳もなく、諦めてぶるーく様の名前を出す





『…ぶるーく様から頂き』


kn「ぶるーくね、おっけ」




名前が出た瞬間そう小さく呟いて立ち上がるきんとき様




『ちょあの、どこ行くんですか?』


kn「決まってるでしょ、ぶるーくの部屋」



『まだ6時前なのでご迷惑かと』





kn「彼奴いっつも起きるの遅いし起こしてあげよう」


『…頭大丈夫そうですか?』






心配しないで、と完全に笑っていない瞳を少し細めてから医務室を出ていくきんとき様






…ごめんなさいぶるーく様






誰もいない医務室でぶるーく様に謝ることしか出来なかった







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作者名:ゆり | 作成日時:2023年4月29日 22時

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