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“A、じゃあね”





とても小さく見える母の背中が遠ざかる





その小さな体でどれだけの物を抱えてきたのか、





“お母さっ、やだぁ!やだ!”





小さな私は知る由もなかった






遠ざかっている彼女の姿が闇に包まれていく



必死に手を伸ばしても届かないこの想いを





この気持ちを






何処へ仕舞えばいいのかなんて知らない





ねぇ





教えてよ













『っは、…』





勢いよく体を起こす




まだ荒い呼吸とうるさい鼓動をゆっくりと整えていく




『…夢、か』





辺りを見回すといつもと変わらぬカーテンとベッド


清潔感のあるアルコールの匂いが鼻を通る




変な夢を見た、と思いながらふと病室の窓を開けた


朝の清々しい冷たい空気を体いっぱいに取り入れる




所々から聞こえる鳥の囀りを耳に入れながら、ゆっくりと瞳を閉じていく





“A”




温かさを帯びたそのか細い声に私は何度も励まされてきた





押し潰されそうになった時も


生き苦しいと感じた時も




いつだってあの声を思い出してきた




だからこれからも大丈夫


って思ってるけど





いつかこの声を忘れてしまいそうで怖い





声すら忘れてしまったら、私の中に彼女はもう居ないのかもしれない




顔はもう既に思い出せない




どんな表情で笑っていたか


どんな眼差しで私を見ていたか





全部忘れてしまった



「………?」




だからせめて


貴方の声は忘れないように





「…ちゃ…?」





ずっと私の中に居てね






kn「Aちゃん」






『…え?』




声のした方を振り向くと、心配そうに眉を顰めているきんとき様が居た



『おはようございます』


窓を閉めながら笑みを浮かべて挨拶をする




kn「あぁ…うん、おはよう」




歯切れの悪い返答に少し首を傾げる


何かあったのだろうか




『こんな朝早くにどうしたんですか、』



kn「様子見に、って思ってたけど大丈夫?」



はい、と返事をして立ち上がる



『すみません、用意するので1度出てもらっても…』




kn「…うん、分かった」





医務室の扉を開けて出ていくきんとき様


いつから居たのかなんて気づかなかった






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作者名:ゆり | 作成日時:2023年4月29日 22時

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