０４ ページ4
だっこしてくれている巻島先輩の腕の力が強くなる。
「俺たちは明日、あの選手たちの屍の上を走るっショ。俺たちは生き残った。悔しさは明日のレースに取っておくっショ。チーム全員で明日のスタートを切れる。それがどれだけ凄いことか、それを忘れるなっショ」
「「「はい･･･っ」」」
話し終えた巻島先輩は、私をだっこしたままテントに戻るために歩き出した。
巻島先輩は、疲れているはずなのに、このことを教えてくれる為にあそこまで連れて行ってくれたんだ･･･。
明日を迎えられない人たちがたくさんいる。
だけど、総北は、チームみんなが生き残っている････。
それがどれだけ幸運なことで、どれだけ奇跡に近いことか、それは走ってきた人にしか分からない。
私は、みんながいてくれて、引っ張って、守って、支えてくれたから明日を走ることができる。
ズキリと足首の裏側に痛みが走ってドキリとしたけれど、意識を向けた足に、もう痛みはなくてほぅっと息を吐き出した。
テントに戻ると、田所先輩がイスに項垂れて座っていた。
１人分開けたところにあるイスに巻島先輩は私を膝に乗せて座る。
「おう。お疲れさん」
「ああ･･･。先輩するのは疲れるっショ」
「ぁぅ･･･。不甲斐ない後輩で申し訳ないです･･･」
私の言葉に田所先輩は大きな声で笑って、巻島先輩は喉の奥でクツクツと笑う。
すると田所先輩が独り言のように言った。
「はぁー。本当、昨日も今日も、とんでもねぇことやって退けやがったよな」
「クッハ。まったくっショ。心臓がいくつあっても足りねぇ」
「････？」
田所先輩と巻島先輩の会話だろうと、私は黙って何の話かなと思いながら聞いていた。
「田所っち。俺はもう一歩も動きたくないっショ」
「奇遇だなぁ。俺も腕１本も動かねぇんだわ」
「「疲れた(っショ)･･･」」
２人はまた笑って揃ったなと笑っているけど、本当にすごく長い１日だったなと思う。
いろんな事が起こって、本当に大変な１日だった。
疲れているせいか、先輩たちの会話が子守歌のように遠くで聞えて、私はゆっくりと意識を手放した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 167人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「愛され」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
瑠璃色の夢(プロフ) - 佐藤悠真さん» 嬉しい感想ありがとうございます＾＾何度も評価出来ないことを初めて知りました（汗）応援ありがとうございます♪今後も頑張りますのでよろしくお願いいたします(*^^*) (2020年4月25日 1時) (
レス) id: d25e595259 (このIDを非表示/違反報告)
佐藤悠真(プロフ) - このお話大好きでいつも閲覧させてもらってます。でもそこに襲いかかってくるのが評価は一度しかできないという冷たい現実…(泣)いつも応援してます！更新頑張ってください！ (2020年4月25日 0時) (レス) id: 44efc3fddb (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃色の夢(プロフ) - みー姉さん» 嬉しい感想ありがとうございます＾＾好きの一言にたくさんの気持ちが篭っているのを感じてとても嬉しくなりました。その一言で十分です！今後も頑張りますのでよろしくお願いいたします(*^^*) (2020年4月24日 1時) (レス) id: d25e595259 (このIDを非表示/違反報告)
みー姉 - 好きです。私もローディーで…とか最初から読んでます…とか、初コメですとか、色々言いたい事はあったはずなのですが、頭悪い感想しかなくなりました。好きです。 (2020年4月24日 0時) (レス) id: fdbf7ce13f (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃色の夢(プロフ) - Lienさん» 嬉しいコメントありがとうございます♪何度も読み返してくださっていると聞いて心がポカポカになりました＾＾頑張って続けていきますのでよろしくお願いいたします(*^^*) (2020年4月2日 17時) (レス) id: d25e595259 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：瑠璃色の夢 | 作成日時：2019年12月17日 2時
