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にぃさまにロードレーサーと私を運んでもらって、箱根学園の門を車で潜ってあの立派なトレーニング施設の前に到着すると、日陰に入っていた監督さんが車の近くまで歩いてきた。
以前はすごく怒っていたところしか見ていなかったのと、私も怖い気持ちでいっぱいいっぱいだったから、車の傍でニコニコ顔で待機している監督さんの印象が大きく変わってしまった。
そんなことを考えていたせいか、怖い思いをしたことを思い出してドクンと胸の鼓動が大きくなる。
そっか、あの後からは私に気遣って箱根学園に行かずに旅館からロードに出ることになったから、あれから初めて来るんだ。
恐る恐る車から降りると、監督さんは私の潤んだ目を見て、慈愛に満ちた微笑みで頭を撫でてくれる。
「よく来てくれたね。1人でここで過ごすのは君にとってとても勇気がいることだろう。以前君と関わったうちの部員は皆君のことを大切に思っていたようだ。大いに胸を借りるといいよ」
「ぁ・・・。ありがとう、ございます・・・。あの、よろしく・・・お願いします・・・っ」
ぺこりと頭を下げると、監督さんはまた私の頭を撫でて微笑んでくれた。
にぃさまは車から私のロードレーサーをおろしてくれてる。
「姫。金城からの伝言だ。『アレは封印』だ。んじゃ、頑張れよ!」
にぃさまはニカっと笑って行ってしまった。
本当に今日から4日間、先輩たちも、みんないないんだ・・・。
すごく心細くて涙が溢れて俯いていると、監督さんは背中を撫でてくれて『乗り越えれば君の心はもっと成長するよ』と言ってくれて、私も小さな声で『はい・・・』と答えるのが精一杯だった。
福富さんには私が4日間練習に参加することは伝えてくれているらしい。
そっか、ここは知らない場所でも、知らない人しかいないとこでもないんだ。
そう思うと、ほんの少しだけ安心感で胸が満たされる。
「さあ。もうみんな集まっている時間だ。最初は心細いだろう。一緒に行こうね」
そう言って微笑んでくれる監督さんに勇気をもらって、私は一歩を踏み出した。
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瑠璃色の夢(プロフ) - ダリアさん» 素敵な感想をありがとうございます^^状態異常という表現に嬉しすぎて笑っちゃいました(笑)神・・・なんて素敵なお言葉いただけるなんて光栄です><今後も頑張りますのでよろしくお願いいたします(*^^*) (2019年10月29日 3時) (レス) id: 86b4dd6b0b (このIDを非表示/違反報告)
ダリア - 荒北さん(箱学メンバー)との合宿、最高すぎて“悶える”という状態異常にかかりっぱなしでした^^この作品神がっかてます! (2019年10月28日 22時) (レス) id: 7c4b8b3529 (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃色の夢(プロフ) - ソラさん» いつも感想ありがとうございます^^たくさんコメント頂けて嬉しい限りです♪何度も読み返してくださって感激です!推しが決まらない内はブレブレでいろんな方に愛していただきますね★今後ともよろしくお願いいたします('-'*) (2019年8月4日 1時) (レス) id: 86b4dd6b0b (このIDを非表示/違反報告)
ソラ(プロフ) - 何度もコメすみません(^^;) 荒北さんのお姫様抱っこに触発されてまた1話から全部読んできちゃいました(≧∇≦)何度めかな笑。読むページによって推しが変わりますが姫ちゃん可愛い過ぎますね。箱学の押せ押せ楽しみにしていますね(^ ^) (2019年8月3日 18時) (レス) id: c7e90ea51e (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃色の夢(プロフ) - 的場琳さん» 嬉しい感想ありがとうございます('-'*)総北陣の大人しさが際立つ箱学の押せ押せを執筆できればと思います。今後も頑張っていきますのでよろしくお願いいたします^^ (2019年7月30日 21時) (レス) id: 86b4dd6b0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瑠璃色の夢 | 作成日時:2019年5月31日 2時