私が恋をしたヒーローは、いわゆるツッパリってやつでして。【今日から俺は！！】

第11話 ページ14

伊藤くんへのストーカー行為がめでたくバレてしまってから約1時間後。

私は、伊藤くんの彼女ーーーー早川京子さんと、喫茶店でパフェをつついていた。




「んんっ、美味しい！」

思わず感嘆の声を漏らしてしまう程に、そのチョコレートパフェは絶品だった。

こんなに美味しいパフェがあるものだろうか。
今まで食べた中でトップに近い。

人前であることも忘れて夢中で食べ進める私に、京子さんは優しく微笑んでくれる。なんて良い子だ。




「それにしても、良いお店だなぁ……」

「ここ、伊藤さんとよく来るんです」

「え、伊藤くんと！？ えぇ！？ ここに！？」


危うくパフェを噴き出しそうになるのを堪えて訊き返す。


ーー伊藤くんも、なかなかの見た目詐欺じゃないか。

アンティーク調の質素な雰囲気ではあるが、メニューといい、客といい、いかにも女の子向けの店である。

ウニ頭な上に長ランで、仮にもツッパリである伊藤くん。

そんな彼が、ここで嬉しそうにパフェをつついている姿ーーーーやめた。想像したらかなり嫌だ。





「あ……そういえばさ、京子さん」

「なんです？」

閑話休題とばかりにクリームを一口飲み込んで、京子さんに話を振る。

キョトン、とした彼女の可愛らしい表情にクスリと笑いながら、気になっていたことを尋ねてみることにする。




「……どうして、私だけを誘ってくれたの？」




ーーそう。これがさっきからずっと引っかかっていたことだ。


些細な疑問ではあるけれど、京子さんなら4人で遊ぶ方が良かったのではないだろうか。


出会ったばかりの彼氏の友達と、2人きりで喫茶店に行くなんて、どこかおかしいのではないか。


初対面の女の子にこんな疑問を抱く私の方がおかしいのかもしれない。


しかし、私は気になって仕方がないのだ。



ーー京子さんの笑みのぎこちなさが。








「……これ、後でさりげなく訊こうと思ってたんだけど」


その瞬間、京子さんから、敬語も笑みも消えた。

少し冷たくなったその視線を受け止め、「うん？」と優しく訊き返す。



ふぅ、と一呼吸置いてから、京子さんは静かに口を開く。




「……アンタ、伊藤さんのコト、好きだろ」




値踏みするような眼をこちらに向けながらそう言った京子さんの顔はーーーー


なんだか、闘うときの伊藤くんの顔に似ているような気がした。

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