第9話* ページ11
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「伊藤さん、まだかな……」
商店街の裏にある、落ち着いた雰囲気の喫茶店。
店内の端の席に、ポツリと座る青蘭女子高の女番長――――早川京子は、ぬるくなったコーヒーをすすりながら、無意識のうちに呟いていた。
『ごめん京ちゃん、ちょっと知り合い見つけた……すぐ帰ってくるから』
先刻、そう言って店から出て行ってしまった自分の恋人の姿を思い出す。
きっと、また喧嘩だろう。勘づいていながら止められなかった自分に、思わず舌打ちを漏らしてしまう。
チラリと壁掛けの時計を見る。もう、30分以上も経っていた。
――伊藤さんなら余裕でケチャケチャにしてる頃だろうが……
それでも、彼に何かがあったなら。
千円札をレジに置き捨て、京子は急ぎ足で店を走り出た。
* * *
――――だから、見てしまった。
自分の恋人と、知らない女が抱き締め合っている光景を。
「……違う、分かってる」
そう、分かっている。彼のことだ、きっとまた余計な事に巻き込まれて、いつものお人好しを発揮して。
そんな彼に、自分も惚れてしまったのだから。
だが、それでも――――京子の心は、晴れなかった。
「伊藤さんの、バカ」
どうしても自分は心が狭い女だと、情けない気持ちで京子はその場を後にした。
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相馬白楽(プロフ) - 841(やよい)さん» ありがとうございます……!!恐縮です!受験シーズンで更新遅めですが、何卒よろしくお願いします! (2019年1月22日 15時) (レス) id: abbe031de4 (このIDを非表示/違反報告)
841(やよい)(プロフ) - イラストもうまくて文章力も凄いです…!あなたは神ですね……!! (2019年1月7日 14時) (レス) id: af225abe0a (このIDを非表示/違反報告)
相馬白楽(プロフ) - カナリアさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!これからも頑張って参ります! (2018年12月8日 21時) (レス) id: 099d65d280 (このIDを非表示/違反報告)
カナリア(プロフ) - とっても面白いです更新頑張ってくださいとってもたのしみにしてます! (2018年11月23日 19時) (レス) id: 0cf1c80018 (このIDを非表示/違反報告)
相馬白楽(プロフ) - 智世琴さん» わーっありがとうございます!文章力を褒めていただける日が来るなんて;;;; 地の文が多いのがクセで、かなり抑えたので不安だったのでそう言っていただけて嬉しいです!応援よろしくお願いします(∩´∀`)∩♪ (2018年11月15日 18時) (レス) id: 83bc508e1d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:相馬白楽 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/soranana/
作成日時:2018年11月14日 16時