繋ぐ ページ37
「小鉄君!俺にできる事があれば手伝うよ!」
炭治郎の視線は、自身よりも遥かに上に注がれている。
彼が話しかける小鉄は、木に登って涙を流していた。
人形の鎧が砕けたのを目の当たりにした小鉄は、突然その場を後にしたのだ。
人形が壊れるのを見たくない。
小鉄の思いは理解できていた炭治郎だったが、それでも小鉄に励ましの言葉をかけ続ける。
「君には未来がある。十年後二十年後の自分のためにも今頑張らないと。今できないこともいつかできるようになるから。」
「…ならないよ、自分が駄目な奴だってわかるもん。俺の代で終わりだよ。」
炭治郎の前向きな言葉とは裏腹に、小鉄の言葉には拭いきれない不安が滲みだしていた。
言葉を言い終わると同時、小鉄の顎に突然痛みが走る。
驚いて辺りを見渡すと、自分の隣に先程まで木の下にいたはずの炭治郎の姿が見えて思わずヒッ、と引きつった声が漏れた。
「投げやりになってはいけない。」
呆然とする小鉄をよそに、炭治郎は淡々と言葉を続ける。
「自分にできなくても誰かが引き継いでくれる。引き継ぐための努力をしなきゃならない。俺は鬼舞辻を倒したいと思っているけれど、鬼になった妹を助けたいけど、志半ばで死ぬかもしれない。」
炭治郎は、視線をまっすぐ小鉄に注いだまま力強い言葉を並べている。
小鉄もまた、炭治郎から目を逸らせずにいた。
「でも、誰かがやり遂げてくれると信じてる。俺たちが繋いでもらった命で上弦の鬼を倒したように、繋いだ命がいつか必ず鬼舞辻を倒してくれるはずだ。」
一緒に頑張ろう、と小鉄の手を握って炭治郎の言葉は締めくくられた。
嗚咽で喉を詰まらせながら、小鉄はかろうじてうん、とだけ返した。
「俺人形が壊れるの見たくなかったけど決心付けるよ。」
しばらくしてそう告げた小鉄に炭治郎の表情が明るいものへと変わる。
その時、
「ねぇ」
声が後ろから聞こえた。
そこに居たのは、時透無一郎。先程まで絡繰と一緒にいたはずの人物だった。
「俺の刀折れちゃったからこの刀貰ってくね」
そう言って見せたのは、先程時透が使っていた刀とは別の物だった。
柄を握っているのは、先程の絡繰人形。
―――の、腕だった。
彼の持つ刀は、絡繰が壊れたことを示すためには十分だった。
悲鳴のような、甲高い音が僅かに小鉄の喉から漏れる。
小鉄の後を追って、炭治郎が走り出した時。
「ねぇ君、あの友達に何かした?」
時透の僅かに困惑の色を帯びた声が炭治郎へと投げかけられた。
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作者名:kanna | 作成日時:2019年10月22日 12時