最速 ページ18
私の「判断力が高まった状態」というのは俗にいう”眠っている本能が表に出た状態”、極端に言ってしまえば機械の制御装置が外れた状態に近いらしい。
この状態のことを宇髄さんに倣って最速の状態、と呼ぶことにする。
自分の中にある安全装置を外すという代物なので、当然反動もでかい。
それが分かったのは訓練から一週間経った頃だった。
初めの一週間は毒を使っての訓練。まずは自分の”状態”の切り替わりを意識するところから始まった。
少しずつ切り替わる時間は早くなっていき、訓練の最初から最速の状態に持っていけたのが一週間経った頃だった。
そこから、修行は第二段階へ移行する。
これが相当きつかった。
泊まり込みで宇髄さんの家にお世話になりながら、四六時中くないやら火薬玉が飛んでくる。
火薬玉は間違って斬ろうものなら大爆発する代物なので、くないの音と正確に聞き分ける必要があった。
一日目、朝からずっと最速の状態で過ごしていたため昼に意識が途切れる。
突然、体が重くなってぷつん、と意識が途切れた。
これが大体三日くらい続いた頃、少しずつ持続時間が長くなって夕方までは持つようになった。
それを見計らったように、この日から寝ている間もくないが飛んでくるようになる。
殺す気か?と思うが宇髄さんはいたって正気である。この人、怖い。
五日目。夜に一度失神するが宇髄さんに引っ叩かれて目を覚ます。
六日目。丸一日はどうしても最速の状態が続かないことを悟って、くないが飛んできてから意識を切り替えるようにしてみた。
でも耳で音を聞き取ってからの僅かな時間で切り替えることができない。
宇髄さんは方向性としては良い、切り替える速度を上げるようにしろと声をかけてくれた。
そんな地獄の日々が二週間続いて、十四日目の夜。
宇髄さんから訓練の終了を告げられる。
後は実戦でやればできる、と根性論じみた言葉を私に投げた後、
「初日がそうだったみたいに、お前の最速の状態は長い間続かねぇから使いっぱなしだと最悪戦闘中に失神するぞ。まずいと思ったらすぐ切り替えること。わかったな。」
そう言って宇髄さんはよく頑張ったな、と労いの言葉をかけてくれた。
次の日の朝、修行のため外に出ると、冨岡さんの姿が見えた。
今日は冨岡さんに稽古をつけてもらおう、と思って声をかける。
それと同時、ぐらりと視界が歪んだ。
体が重い。
これは意識が飛ぶ前のやつだな、と思いながら、私の意識は突然途切れた。
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作者名:kanna | 作成日時:2019年10月22日 12時