兄妹の絆 ページ9
下弦の伍、累との戦いは熾烈を極めていた。
禰豆子は蜘蛛の糸に絡めとられて身動きが取れず、炭治郎の刀も折れている。
炭治郎が繰り出したのは、回転を増すごとに強い斬撃となる、水の呼吸最後の型だった。
「全集中・水の呼吸 拾ノ型 生生流転」
ザン、という音を立てて糸が切れる。
糸を斬って進みながら、鬼の間合いに入る。
「ねぇ」という声が聞こえた。
「糸の強度は、これが限界だと思ってるの?」
その声とともに、糸が炭治郎の目の前に張り巡らされる。
先ほどの糸とは違い、糸は赤く染まっていた。
だめだ、と炭治郎は直感する。
この糸を斬るには、まだ回転が足りない。匂いが、先程とはまるで違った。
走馬灯が、走った。
思い出したのは父の事。
「炭治郎、呼吸だ。息を整えてヒノカミ様になりきるんだ」と、記憶の中の父が言った。
父は、年の初めに神楽を舞っていた。
火の仕事をするため、怪我や災いが起きないよう祈りを捧げるのだと、母から聞いた。
父は、体が弱かった。
なぜ雪の降る中長い間舞を舞えるのか聞いたことがある。
そのとき父が言っていた。
「息の仕方があるんだよ。どれだけ動いても疲れない息の仕方。
正しい呼吸ができるようになれば炭治郎もずっと舞えるよ。」
父は俺の頭を撫でながら、炭治郎、この神楽と耳飾りだけは、途切れさせず継承していってくれ。
約束なんだ。と、優しい声で言った。
父の姿が消えて、目の前に蜘蛛の糸が現れる。
先程まで水の青に染まっていた炭治郎の剣気そのものである龍は、ゴウ、という音を立てながら炎の赤へと姿を変えていた。
「ヒノカミ神楽 円舞!」
真下に刃を振り下ろすと、バラ、という音を立てて糸が切れた。
すかさず鬼の元へと脚が向かう。
累は後退しながらも次々と新しい糸を張っていた。
間合いに入った時、自分の首元に糸があるのが匂いで分かった。
もし今、一旦引いたとしても、水の呼吸からヒノカミ神楽の呼吸に切り替えた跳ね返りが来る。
隙の糸が、見えた。
腕だけなら、鬼の頸に届く。
相打ちを覚悟で刃を鬼の頸に走らせると、突如糸が赤い炎によって焼き切れた。
禰豆子の血鬼術だ。
炭治郎を切り裂こうと張り巡らされた糸が、焼き切れていく。
炭治郎の剣は鬼の頸に届き、剣に付着した禰豆子の血が、爆ぜる。
「俺と禰豆子の絆は、誰にも引き裂けない!!」
炭治郎の剣は、禰豆子の血鬼術によって加速し、
硬い鬼の頸は、兄妹の炎によって刎ね飛ばされた。
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弥月(プロフ) - kannaさん» こちらこそありがとうございます!応援してます! (2019年10月13日 9時) (レス) id: 6d130177f0 (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - 弥月さん» コメントありがとうございます。初めての投稿になるため不安でしたが、そう言っていただけるととても嬉しいです。読んでいただいて、本当にありがとうございます。続き、頑張って書きますね!! (2019年10月13日 7時) (レス) id: 73f13c0ff4 (このIDを非表示/違反報告)
弥月(プロフ) - コメント失礼します。最初から一気に読ませていただきました!言葉では表せない程夢主ちゃんの心の強さや優しさが本当に素敵だなと思いました!言葉おかしかったらすみません…!続き、楽しみにしています!(*´`*) (2019年10月13日 4時) (レス) id: 6d130177f0 (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - アーロさん» 申し訳ありませんでした。こちらの確認不足です。オリジナルタグ外しましたのでご確認ください。 (2019年10月12日 11時) (レス) id: b959b235dc (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - かなとさん» 申し訳ございません。こちらの確認不足です。オリジナルタグ外しましたのでご確認ください。 (2019年10月12日 11時) (レス) id: b959b235dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kanna | 作成日時:2019年10月12日 10時