【鬼滅の刃】氷の刃【弐】

ド派手に ページ27

ギュル、と風を斬る音と共に帯が女性たちに迫る。

しかし、その帯が人間に届く寸前、「何か」が帯を地面に打ち付けて帯の動きは止まった。

「蚯蚓帯とは上手いこと言うもんだ！」

「ほんと気持ち悪いですほんとその通りです。天元様に言いつけてやります」

はきはきした声と弱弱しい声、二人分の声が聞こえた。

見ると、二人の女性がくないを手に持っている。恐らく、帯を止めたのはあのくないだろう。

「あたしたちも加勢するから頑張りな猪頭！！」

「誰だテメェら！！」

「宇髄の妻です！アタシあんまり戦えないですから期待しないでくださいね！」

弱弱しい声に、「須磨ァ！弱気なことをいうんじゃない！！」と元気な声が響く。

その声に答える須磨と呼ばれた女性は、
「だってまきをさんあたしが味噌っかすなの知ってますよね！すぐ捕まったし！無茶ですよ捕まってる人みんな守り切るのは！あたし一番に死にそうですもん！！」と半泣きになりながら叫んだ。

「そうさ、よくわかってるねぇ。さぁどれから食おうかな」と蚯蚓帯が声を発する。


その時、伊之助の背後に動くものがあった。

それは、雷のような音を立てながら壁から壁へと縦横無尽に駆け抜けて帯を次々に斬っていく。

「お前ずっと寝てた方がいいんじゃねぇか」と伊之助がその少年の姿を見てぽつりと呟く。

雷の音の正体は、眠ったままの黄色い髪の少年、我妻善逸だった。



蚯蚓帯は、二つの理由で混乱状態にあった。

一つは善逸の想定外の速さに。そしてもう一つ。

(今音が二つ鳴らなかったか？)

蚯蚓帯には、落雷のような音が、二つ重なっているように聞こえたのだ。

一つは善逸から。残りの一つは…と考えていると、


真上から「ドゴォン」という爆発音とともに人影が現れた。

轟音と共に現れたのは、両手に刃を持った音柱の宇髄天元。


気配だけで、柱だとわかった。

地上から、この地下までを破壊する力量と、威圧感。

気が付けば、蚯蚓帯の体は粉々に切り裂かれていた。


バラ、という音を立てて帯がひらりと宙を舞う。

「まきを、須磨」

宇髄が初めに口にしたのは自分の嫁の名前だった。

「遅れてすまなかったな」


蚯蚓帯の体を一瞬で粉々にした宇髄は不敵に微笑みながら、

こっからはド派手に行くぜ、と楽しそうに声を弾ませた。

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