古い記憶 ページ28
その頃、宇髄に粉々にされてしまった蚯蚓帯は本体である蕨姫の元へと向かっていた。
ぎゅるぎゅるという音を立てながら、帯が鬼の中に入っていく。
危機を察知した炭治郎がヒノカミ神楽を放つが、斬ったはずの場所に鬼の姿はない。
消えた。そう思っていると、頭上から声が聞こえた。
「やっぱり柱が来ていたのね」
禍々しい匂いがする。
「あの方に喜んでいただけるわ…」
黒かった髪は白へと変わり、体の至る所の血管が膨張して浮き出ている。
禍々しい姿だった。それでもなお、その鬼は美貌を保っていた。
「おい、何をしているんだ!!」という、声が聞こえた。
人の匂い。
騒ぎを聞いて、いろいろな人間がこちらを見つめていた。
「うるさいわね」という、鬼の冷酷な声がする。
「ダメだ、下がってください!!」
炭治郎が声をかけた瞬間、
亀裂が走った。
男の人を庇おうと前に出る炭治郎の左肩が切れた。
男の人は後ろで手首を斬り落とされて泣き叫んでいる。
血の匂いが充満する。
叫び声と泣き声があたりにこだましていた。
怒りでどうにかなりそうになる頭を必死に落ち着かせながら、後ろの男性に声をかける。
「落ち着いて。あなたは助かります。腕をひもで縛って…」
その様子を、気分良さそうに見つめる女がいた。
上弦の陸。
「待て。許さないぞ…こんなことをしておいて…」
炭治郎の声は怒りで震えていた。
「何?まだ何か言ってるの?もういいわよ不細工。醜い人間に生きてる価値なんてないんだから。仲良くみんなで死に腐れろ。」
相変わらずの刺々しい声で、鬼は言う。
気が付けば、炭治郎は屋根にいる鬼の足を掴んでいた。
刃を振るうと、鬼は一瞬驚いたような表情を浮かべて、掴まれた足を犠牲に炭治郎から距離を取った。
「失われた命は回帰しない。二度と戻らない。」
鬼の足を持ったまま、炭治郎は淡々と話す。鬼の足は、すぐに再生した。
「生身の者は、鬼のようにはいかない。なぜ奪う?なぜ命を踏みつけにする?」
鬼は、戸惑っていた。
この言葉は聞いたことがある。
「何が楽しい?何が面白い?命を何だと思っているんだ。」
目の前に、見知らぬ剣士の姿が見えた。
炭治郎と、剣士の姿がかわるがわる入れ替わる。頭が混乱している。
「どうしてわからない?」「どうして忘れる?」
うっとうしい声を振り払うように拳を屋根に打ち付ける。
「知ったこっちゃないわよ」
人間の頃の記憶など、当の昔に無くしていた。
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弥月(プロフ) - kannaさん» こちらこそありがとうございます!応援してます! (2019年10月13日 9時) (レス) id: 6d130177f0 (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - 弥月さん» コメントありがとうございます。初めての投稿になるため不安でしたが、そう言っていただけるととても嬉しいです。読んでいただいて、本当にありがとうございます。続き、頑張って書きますね!! (2019年10月13日 7時) (レス) id: 73f13c0ff4 (このIDを非表示/違反報告)
弥月(プロフ) - コメント失礼します。最初から一気に読ませていただきました!言葉では表せない程夢主ちゃんの心の強さや優しさが本当に素敵だなと思いました!言葉おかしかったらすみません…!続き、楽しみにしています!(*´`*) (2019年10月13日 4時) (レス) id: 6d130177f0 (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - アーロさん» 申し訳ありませんでした。こちらの確認不足です。オリジナルタグ外しましたのでご確認ください。 (2019年10月12日 11時) (レス) id: b959b235dc (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - かなとさん» 申し訳ございません。こちらの確認不足です。オリジナルタグ外しましたのでご確認ください。 (2019年10月12日 11時) (レス) id: b959b235dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kanna | 作成日時:2019年10月12日 10時