氷の呼吸 ページ2
ずきずきと、体が悲鳴を上げている。
共食いが終わっても、痛みは続いていた。恐らく、巨漢の鬼もそうだろう。
呼吸を整え、痛みから意識を逸らす。
巨漢の鬼の頸は、太かった。一太刀で斬るにはどうしたらいいか考える。
(どこかに、弱点があるはずだ)
地面を蹴って、鬼の頸元まで跳ぶ。
鬼の右手が、Aを襲った。
鬼の動作を見切ったAは刀を真下に振り下ろし、刀の遠心力でふわりと体を浮き上がらせる。
鬼の右腕を踏み台にもう一度跳躍して一気に頸に近づく。
鬼の頸に刃を通そうとするが鬼の頸は硬く、刃が通らないことが音で分かる。
(そうだ、音だ)
Aは鬼の肩に乗ったまま、何度も頸に刀を打ち込んだ。
刀がキン、キン、と金属の音を立てる。
自分の首に、血が滴るのがわかった。
いま、自分は干天の慈雨ではない技を出そうとしている。
恐らく、痛みはそのまま自分へと襲い掛かるだろう。
鬼が肩のAを振り下ろそうと何度も大きな手をAへと伸ばす。
その鬼の攻撃を避けながら、刀を振り続け、鬼の弱点を探す。
一か所、キィン、と僅かに刀の音が変わる場所があった。
「−−−−見つけた」
そう呟くと、Aは鬼の頸が最も斬りやすい場所に生える木まで跳躍し、刃を構えた。
距離はおよそ4メートル。
長く薄い刀を構えながら足に力を込める。
自分の口からは、シュゥゥゥ、と水の呼吸とは違う氷が陽光に溶けているような音が聞こえた。
『鬼を憎むな。恨むな。』
おじいちゃんの言葉を、思い出す。
刀が冷気を帯びて、パキパキと凍っていく音がする。
鬼を、人間に戻してやるのが、氷の呼吸だ。
「氷の呼吸 壱ノ型」
向かってくる鬼の元へ、一気に飛ぶ。
先ほど違う音が聞こえた場所がはっきりと見えた。
鍔ギリギリの所まで刃を調節し、鬼の頸に当てる。
「薄氷」
キィン、と氷の音がして、刃が通る。
鬼の頸は、パキパキと凍るような音をさせてからぼろぼろと崩れていった。
首からの出血が激しくなるのも気にせず、意識をもう一つの鬼に集中させる。
彼女の頸に、二度目の氷を纏った刃が迫る。
すぐに、パキン、という澄んだ氷の音が自分の首から聞こえたのを確認してから
最後に、「やっとお父さんとお母さんに会える」と、嬉しそうな声で笑った。
風に揺れる、紫陽花の羽織が見えた。
81人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
弥月(プロフ) - kannaさん» こちらこそありがとうございます!応援してます! (2019年10月13日 9時) (レス) id: 6d130177f0 (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - 弥月さん» コメントありがとうございます。初めての投稿になるため不安でしたが、そう言っていただけるととても嬉しいです。読んでいただいて、本当にありがとうございます。続き、頑張って書きますね!! (2019年10月13日 7時) (レス) id: 73f13c0ff4 (このIDを非表示/違反報告)
弥月(プロフ) - コメント失礼します。最初から一気に読ませていただきました!言葉では表せない程夢主ちゃんの心の強さや優しさが本当に素敵だなと思いました!言葉おかしかったらすみません…!続き、楽しみにしています!(*´`*) (2019年10月13日 4時) (レス) id: 6d130177f0 (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - アーロさん» 申し訳ありませんでした。こちらの確認不足です。オリジナルタグ外しましたのでご確認ください。 (2019年10月12日 11時) (レス) id: b959b235dc (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - かなとさん» 申し訳ございません。こちらの確認不足です。オリジナルタグ外しましたのでご確認ください。 (2019年10月12日 11時) (レス) id: b959b235dc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:kanna | 作成日時:2019年10月12日 10時