鬼を憎まない剣士 ページ1
彼女の血鬼術は、鬼にした人間を血の中から生み出して操り、痛みを共有させるというものだ。
それなのに、私が命を懸けて殺そうとしていた「あいつ」の大切な剣士は、眉一つ動かすことなく鬼の影達をを斬っていく。
意味が分からなかった。
鬼を憎まない剣士はいない。
鬼を憎む心がある限り、鬼の尊厳よりも自分の命を優先する。
今までの剣士の中で、鬼を斬って苦しまない者はいなかった。
なのに、よりにもよっておじいちゃんの大切なAは、鬼が痛くない斬り方をずっと続けていた。
Aの首に刀傷の跡がないのが何よりの証明だった。
残り少ない鬼の影に、指示を出す。
自分でも理解のできない苛立ちをぶつけるべく
木の幹を左足で蹴って、跳躍しながら影のような鬼の頸を捉え、刃を通した。
右からは鬼の拳が飛んできて、左からは噛みつこうとする鬼が口を開けてやってきている。
「水の呼吸 弐ノ型 水車」
下に刃を振り下ろし、ひらりと身をかわす。
再び後退し鬼の位置を把握する。
踏み込んで一体ずつ頸を斬る。身を捻って、もう一体の鬼の頸も落とした。
干天の慈雨を連続で使うことで、Aは鬼の頸の中でも脆い場所が分かるようになっていた。
鬼の呼吸がする場所。喉仏の下部分。
首の付け根の少し上を斬ると、ほとんど力を入れなくても刃が通る。
ただ、温かい感触はひやり、とした氷のような感触に変わっていた。
残りの鬼が十体程度にまで減った時。
赤い影の鬼が、がつがつと、お互いの肉を喰らい始めた。
瞬間、体中に激痛が走った。
(まずい、共食いをしても痛みが来る!)
斬らなきゃ、と刀を構えるが想像を絶する痛みに体は動かないままだった。
骨に歯が当たる感触がする。肉を食いちぎられる。痛い、痛い、痛い、
食われている鬼と自分が同じ音をしていた。
許容量を超えた痛みに意識を失いかけて地に膝を着こうとした時。
おじいちゃんの声が響いた。死ぬ直前、鬼殺隊で聞いた話だった。
「氷の呼吸は鬼の頸を斬る呼吸。鬼を憎むな。恨むな。鬼を、人間に戻してやるんだ。」
鬼を恨むな。おじいちゃんがいつも言っていた言葉だ。
痛みが少し和らいだと思うと、大きな拳が間髪入れず私の元へ飛んできた。
ドゴォ、と音がして地面が抉り取られる。
共食いをしていた鬼の影は、高さ5メートルほどの一体の異形に姿を変えていた。
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弥月(プロフ) - kannaさん» こちらこそありがとうございます!応援してます! (2019年10月13日 9時) (レス) id: 6d130177f0 (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - 弥月さん» コメントありがとうございます。初めての投稿になるため不安でしたが、そう言っていただけるととても嬉しいです。読んでいただいて、本当にありがとうございます。続き、頑張って書きますね!! (2019年10月13日 7時) (レス) id: 73f13c0ff4 (このIDを非表示/違反報告)
弥月(プロフ) - コメント失礼します。最初から一気に読ませていただきました!言葉では表せない程夢主ちゃんの心の強さや優しさが本当に素敵だなと思いました!言葉おかしかったらすみません…!続き、楽しみにしています!(*´`*) (2019年10月13日 4時) (レス) id: 6d130177f0 (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - アーロさん» 申し訳ありませんでした。こちらの確認不足です。オリジナルタグ外しましたのでご確認ください。 (2019年10月12日 11時) (レス) id: b959b235dc (このIDを非表示/違反報告)
kanna(プロフ) - かなとさん» 申し訳ございません。こちらの確認不足です。オリジナルタグ外しましたのでご確認ください。 (2019年10月12日 11時) (レス) id: b959b235dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kanna | 作成日時:2019年10月12日 10時