緑色の涙は赤黒く【速度松】

６* 痛い ページ8

「……。」

ゆっくりと目を開けていくと光が入ってくる。

一番に目に写ったのは白い天井。
真っ白で、精神病院の様にも思えた。
僕がいるのは精神病院ではなく、普通の病院なのだが。

顔を横に向ける。
赤、青、紫、黄、桃がそれぞれたったり座ったりして。ただ、僕の方を見つめていた。

1人、赤色を除いて。

他の4人より、おそ松兄さんのことの方が気になった。
何故か、なんて。
聞くまでもないだろう？

「おそ松兄さん……？」

「なぁ、チョロ松」

おそ松兄さんは窓の外へと向けていた視線をこちらへと向ける淡い緑の、透けるような瞳が僕の視界へと入る。
おそ松兄さんが窓の外か窓を見つめていたのかはわからないが、今はそんなことどうでもいい。

「おそ……まつにいさ…………。」

頭が真っ白になる。
どうしてか、簡単なこと。
だって、おそ松兄さんがつけている、その目は

―――――僕の目じゃないか。


「最初からさ、こうすれば良かったんだ。本当はこの痛みを俺が味わうべきだったんだよ。」

そう言ってへらっと笑う、責任なんてないような、顔。

どうして。それならもっと他にやり方ならあったはず。
僕の目を手術すれば、皆が普通で居られる。

もし、失敗したら失明をするが。

でも、それなら。今回の手術も一緒だ。
失敗をすれば完全に失明をする。
2人とも。

意味が、わからないよ。


「なんでそこまでして僕の目を……おそ松兄さんに……。おそ松兄さんが痛がっちゃ駄目なんだよ……！」

頬に涙が伝う。しまったと思っても、痛みは来ないまま次々に大粒の涙が溢れてきた。

あぁ、本当に僕の目は僕のものじゃない。

痛みが来なくなり嬉しくないわけじゃない。
むしろ嬉しいよ。

だけど、溢れるんだ。
涙が、嗚咽が、汗が。
こんなの、手術する前と変わっていない。

痛い、いたいよ。
胸の奥が痛むんだ。

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