緑色の涙は赤黒く【速度松】

１２* 嫌いな人 ページ14

sideおそ松


扉の横に『松野チョロ松』と書かれた病室の中、俺一人だけが残っていた。
時間は深夜の１１時。
皆は帰った。……というより、俺が帰らせた。

さっきとは違う、余裕ぶった笑顔を見せて。

部屋の中には、ピッ…ピッ…という無機質な音が一定のリズムで響いていた。
微かに聞こえる、チョロ松の呼吸
本当に浅く、よく耳を済まさないと聞こえないくらい。

医者の話によると、なんとか一命は取り留めたらしい。
だけど、意識不明のまま。
いつ目覚めるか、わからない。もしかしたら、ずっとこのままで死に至るかも知れないという。

「……俺、やっぱお前のこときらいだ。だいきらいだ。チョロ松……。」

すごく、きらい。
きらいで、きらいで。
でも、大好きなんだ。

早く目を覚まして
いつもの様に働こうとしない俺たちに怒って、言い合いして。
いつもみたいに、暮らしたいんだよ。

チョロ松の手を握りしめて、キスをしようとする。
が、そいつの口周りを覆うガラスが邪魔をする。

俺は、何をしようとしてんだ。
実の弟で、相棒でもあるコイツに。

目をギュッと瞑り、その日は寝ることにした。
手を握りしめて、チョロ松少し暖かい体温を感じながら。

深い、深い、眠りへと落ちた__

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