廿 ページ22
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『ッ、はァ、はァ、ッは…』
息が苦しい。
当たり前だ。全力疾走をしているのだから。
筋金入りの運動音痴がそんな事をしたら直ぐに息が上がるに決まっている。
加えて先刻から涙が留めなく溢れている。
拭っても拭っても止まることの無い涙だ。
流しても意味が無いと、無意味だと、頭では判っているつもりの筈なのに。
其れは止まる事が許されていない様に次から次へと零れて、私のセーターに模様を作る様に染みが広がる。
其れでも足を止めない。出来ないのだ。
どんなに苦しくても、辛くても。
幾分か冷静になった頭に先刻の情景がありありと思い浮かばれる。
私の瞳が又、潤んだ。
其の正体は云わなくたって判るだろう。
*
輝いた笑顔で、嬉しそうな声色で話している太宰さんを横目に
「何と云うか、こうして同じ格好をしていると、ほら、双子コーデみたいじゃないかい?」
巷の女の子達に人気のやつだよねぇ、間延びした声で私に問い掛ける太宰さん。
双子コーデって、確か全身を揃える筈なのだけれど、と思った事は口には出さず曖昧に笑う。
「否、うぅん?何だかしっくりこないなぁ」
そう云ったと同時に思案する様に少しだけ、目付きを鋭くする。
周りの皆様は興味を欠いた様に各々の席に着こうと身体の向きを変えようとした処に嗚呼、と太宰さんの声が響く。
「そうだよ!有るじゃないか、今の私達にピッタリの言葉が」
興味を無くした筈だった皆様が又戻って来る。
其の中心に囲まれる様にいる太宰さんが、さり気なく離れようとしていた私の肩を優しく抱き寄せ、一気に距離が縮まる。
太宰さんの惹き付ける様な甘い匂いがふわりと香る。
そうして大きく深呼吸する様に、まるで宣言するかの様に自信に満ち溢れた笑顔で云い放った。
「こうしているとまるで
『ッ、え…?』
「はぁ?何を云っているんだ。第一、お前とAとでは似ても似つかないだろうが」
「えぇー?そんな事無いよ。私、ずっと前から妹が欲しかったのだよねぇ」
丁度Aの様な可愛い妹がね、と云う太宰さんに対して戸惑いを隠せない。
只、太宰さんが放った一言で私は直ぐに現実に引き戻された。
「ねぇ______谷崎くん」
「君は如何思う?」
一番其の噺をして欲しく無い人だった。
返答何て判り切っているのに無意識の内に次の、兄様の言葉を何処か期待して仕舞う自分に心底嫌気が差した。
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黒蜜おもち - 終わり!?おっおわ……続き、ください。。。 (3月28日 12時) (レス) @page38 id: b91ecec67d (このIDを非表示/違反報告)
亜美 - 続きをお恵みください… (12月30日 21時) (レス) @page38 id: 5d2aa23f76 (このIDを非表示/違反報告)
山羊のサーカス(プロフ) - 終わり...だと...!?再度更新を願っております...! (11月25日 18時) (レス) @page38 id: 78c8c266f2 (このIDを非表示/違反報告)
かぐや - 終わっちゃった…更新して欲しいです!!お願いします… (9月8日 21時) (レス) @page38 id: 65c95105c4 (このIDを非表示/違反報告)
rai - お、終わり⁉︎是非更新をしてくれることを願って (8月19日 22時) (レス) @page38 id: 67327e3dd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ふにゃた | 作成日時:2018年2月18日 19時