掃除婦の観察日記２

青は愛より出でて愛より青し 前編 ページ26

俺には、気になる２人がいる。ま、彼女とかじゃなくどっちも後輩なんだけど。ちょうど入社３年目だし、ってんでしばらく面倒見ることになったのが岩橋と神宮寺。その年の新入社員は結構いたけど、岩橋は留学してたらしくて他より年は１個上。おまけに、女子より女子っぽくて目立ってた。
「先輩、よろしくお願いします」
「おう、こっちこそよろしくな」
なんつってたのは、最初だけ。お互い、野球好きだからイロイロしゃべってるうち遠慮がなくなって【岸くん】【いわげん】呼びに変わってた。年下の神宮寺のが【岸くん】呼びはちょっと、みたいな？しっかりしたこと言ってた。
けど、なんつうか。コイツら、変なとこあんの。野球の話とか、いわげんと盛り上がってると。風邪かよってぐらい寒かったりして。見たら、神宮寺がすげぇ顔してるわけ。で、話に入れねえで拗ねてんのかなって思うじゃん？違うらしいんだよ。
で、神宮寺にアレコレ説明してるとさ。真面目に聞いてきて、俺も必死になったりすんのよ。なんか感覚でやってること多いし、見て覚えて欲しいし。つうか、苦手なのよ説明。したら、いわげん入ってくんの。まあ、助かる時もあるけどさ。そういう時なんっか２人で世界作ってる感じ？あれ、俺の立場どこ行った？みたいな。気のせいじゃねえのよ！
ま、そんな感じでまあまあ上手くやってるうち。部長をトップにしたプロジェクトの話が出てきて。
本社の中じゃ、滝沢さんは一番若い部長で。けど、デキる人だし俺からすりゃ雲の上だった。なのに、なんでだかお呼びがかかって。しかも、リーダーを任せたいなんて言われたら、そりゃテンパるって。
「まあ、落ち着いて。まずはこれを見て」
打診された会議室で渡されたのは、何人か名前が書かれたリストで。岩橋も神宮寺も、いた。
「企画中のプロジェクトは、全部で３つ。もちろん全て成功させる。ただ、うち２つは軌道に乗せるまで少しかかりそうでね。岸を中心にしたチームを、ここから少し離れた雑居ビルからスタートさせる。最初は本社出向、という体だから予算も人数も限られるけど。その分、気心の知れたメンバーで始めてみるのはどうかな。知っている名前もあるだろう」
「はい、岩橋と神宮寺は。平野も、名前だけなら」
今、思えば。K＆Pはこっから始まってたんだ。

青は愛より出でて愛より青し 中編→←優しい嘘つき 後編

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す